スクラッパー・ブラックウィル(Scrapper Blackwell)というブルースマンをご存じでしょうか?
熱心なブルースファンなら知っているでしょうが、普通にブルースに興味があるギタリストでも知らない人も多いと思います。
クラプトンファンなら、彼のカヴァーで知っている人もいるかもしれません。
あと、ボブ・ディランが憧れていたなどという逸話もありますが。
個人的には、以前読んだ「ブルースの歴史」で、リロイ・カーというピアニストの相棒として記述されており、
そこで知りました。
その後サブスクやYOUTUBEで検索したのですが、Apple Musicでは曲の途中までしか聴けず、YOUTUBEは数曲しかUPされていません。
なので久々にCDを買うことに。
いくつか作品がありましたが、こちらのボックスセットをポチ。
たぶんこれに全曲入っていると思います。
ちなみに、改めてApple Musicで検索したら全部聴けるようになってました。
なんやねん……
スクラッパー・ブラックウェルは1903年生まれ、1930年代にピアニストのリロイ・カーとのデュオで売れたものの、リロイの死後は引退状態となり、後1958年に55歳で活動再開します。
しかしその4年後、1962年に銃で撃たれてこの世を去ります。
こちらのサイトに詳しいです。
ブラックウェルは世代的にはロバート・ジョンソン(1911年~1938年)より上で、彼の作曲した「Kokomo Blues」はロバートの「Sweet Home Chicago」のモデルになったとされています。
ブラックウェルの代表的な音源としては、リロイ・カーとのデュオと、いくつかのソロワークがあります。
クラプトンのカヴァーで知ってる人もいるでしょう。
ソロワークとしてはこちらが一番有名でしょう。
これもやっぱりクラプトンやってますね。
その他、いくつかは探せばあるんですが、このご時世でもほとんどの曲はネットでは聴けません。
ということで興味ある人はCDを買いましょう。
スクラッパー・ブラックウェルのプレイの特徴は、なんといってもモダンなところでしょう。
ロバート・ジョンソンよりも古い世代にもかかわらず(1903年、明治36年生まれ)、単純な3コードに収まることなく、後年のポップス的なコード進行や、SRV的なリック(たぶんSRVがパクった)も散見されます。
また、ブルースではめずらしい半音をぶつけるようなヴォイシングも使っており、相当先進的なブルースマンだったことがうかがえます。
エレクトリックに転向していたらどんなプレイをしたのか想像するとワクワクしますね。
58年にカムバックしているのでワンチャンあったはずですが、エレキギターは嫌いだったのでしょうか?エレキの音源は残っていないようです。
歌のほうも、甘い声で味のある歌い回しをするので、聴いていると癖になってきます。
変に声を張ったり歪ませたりせず、淡々としているところに本物のブルースマンの匂いが漂ってきます。
ブラックウェルのギターを聴いていると、相当強くピッキングしていることが分かります。
そして、そのハードピッキングから生まれるオンビートの強さがとても印象的です。
ブルースやブラックミュージックをバックビートで解こうとする人は多いですが、個人的にはもしかしたら本当に重要なのはオンビート、頭ではないかというのが最近の考えです。
ジャズでは既にその考えで弾いたり教えています。
もちろん一般的に言われるようにバックビートも大事なんですが、それは頭の感じ方、捉え方から派生するものだという仮説。
ブラックウェルを聴き、その仮説を補強してもらった感じがし、個人的にはそれだけでも収穫でした。