今まで数年に一度ぐらいの周期でブルースを聴いてきましたが、またその時期がやってきました。
原因は不明です。
ただ今回はどうしてもブルースの歴史がちゃんと知りたくて、あれこれ調べてみるとこちらが一番よさそうなのでポチりました。
ポール・オリヴァー氏というイギリス人の方が書いたものだそうで、1969年ロンドンにて初版。
その後改訂版として大型本で再出版されたものです。
ジャズもそうですが、どうも音楽史って日本人が書くと変に軽かったり、決めつけが多かったりウンチク祭になって読んでられなかったり、一方で当事国の人が書くと変に偏ってたり客観性にとぼしかったりするんですが、イギリス人が書くブルース史ならちゃんとしてるだろう、資料もたくさん掲載されてるみたいだし……と、高いけど思い切って買いました。
ポイント使って半額で買えましたが、それでも高い…
結果、大正解でした。
まず視点の公平さ、冷静さにとても安心しました。
たぶんアメリカ人がブルース史を書くと、どうしても奴隷制への感情が出てしまうと思います。
その点著者はイギリス人なので、感情を抑えて淡々と説明しているのが読みやすかったですね。
そして資料取材の実に丹念なこと。
よくこんな写真あったな、こんな無名の奴隷の日記がよく発見されたなと冒頭から驚きの連続でした。
憂鬱を表す意味のBLUESが、音楽形式としてBLUESに変化していく様が歴史の変遷と共に丹念に描かれていて、近代アメリカ史を知らなくても十分理解できる内容です。
また、最初期のいわゆるスライド奏法は、ボトルネックではなくナイフを使っていたというのも知らなかったです。
自称ブルースフリークの人でも知らないんじゃないでしょうか?
まだ1/4ぐらいしか読んでませんが、この段階でも驚きや新発見の連続でめちゃくちゃ面白いです。
個人的には突然ラフカディオ・ハーンの名前が出てきたのがびっくりでした。
知らない人のために書いておくと、ラフカディオ・ハーンとはギリシャ出身の作家で、著名な日本研究家としても知られています。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)
明治時代に日本国籍を取得し、小泉八雲と名乗って島根県で暮らしていました。
余談ですが、「耳なし芳一」や「ろくろ首」「雪女」などはハーンが伝承を元に小説にし、広く知られるようになりました。
気になる人はこちらをどうぞ。
で、「ブルースの歴史」には、1876年滞在していたオハイオ州シンシナティでハーンがブルースの歌詞を集めて雑誌に掲載していたと書いてあります。
ハーン先生、ブルースも研究していたとは……
ちなみにWikipediaによると、州法で禁止されているにもかかわらず黒人と結婚しようとしたとか。
人種に対する偏見が全くなかったようですね。
そんなことまでさらっと掲載してある書籍で、たぶんこれ以上に客観性と高い資料価値を持ったブルース研究書はないでしょう。
ただ、個人的にはせめてブルースの歌詞には原文を付けてほしかったです。
なんか変な田舎訛りの言葉で訳してあって、興が削がれます。
いずれ原本も買おう。
ブルースの歴史が知りたい人は無理してでも買うべき名著です。
僕もやっとこれで信用に値するブルースの歴史が学べそうで、感無量です。
ちなみに、こういう動画もあります。
個人的には動画観て勉強した気になるのは危ないと思っているので、やはりまずはちゃんとした資料を読みたいですね。
追記:読了後の感想