楽器を習得するためには練習が必要です。
実はこれがかなりのくせもので、実際どうしても練習ができなくて挫折する人がほとんどでしょう。
楽器の練習の特徴は、どこまでも孤独だということです。
ほとんどのスポーツはチームで練習します。
個人競技でもグラウンドや体育館で完全に一人でということはあまりないはずです。
走り込みやウエイトトレーニングなどは一人かもしれませんが、時間や頻度はそう多くはないでしょう。
一方楽器の練習は、一人で行う時間が圧倒的に多いのが特徴です。
これを全く想定せずに楽器を始めると、あまりの地味さ、つまらなさ、辛さにショックを受けてしまうかもしれません。
よく「音を楽しむと書いて音楽だ」と薄っぺらいことを言う人がいますが、音楽を演奏する、楽器を弾くには楽しいことだけでは済みません。
もちろん、楽しいことも沢山あります。
それと同時にしんどいこともめちゃくちゃあります。
それも、プロを目指す人だけではありません。
ちょっとコードを覚えて弾き語りがしたい、好きなバンドの曲をコピーして楽しみたいだけ、この曲だけ弾ければそれでいい……そういうレベルですら到達するためには相当しんどいことを乗り越えなくてはいけません。
音楽はスポーツなんかと違い、そのしんどいことが見え辛いので、ただただ楽しいだけだと思ってしまいます。
もちろん楽しいことはいっぱいあるんですが。
楽器の練習で一番辛いのが、孤独に耐えることでしょう。
教室に習いに行っているとしてもせいぜい週一回、バンド練習をするとしてもやはり週一回程度、それ以外の圧倒的な時間を孤独な個人練習に費やさないと上達しません。
この孤独に耐えられなくて挫折してしまう人もいます。
華やかさに憧れて楽器を手にしたものの、いざ練習を始めてみるとこんなに孤独で辛いものだったのかと、誰でも一度は愕然としてしまいます。
楽器の演奏はどちらかというと文化的な匂いがしますが、実際にやってみると肉体的にきついなと感じるはずです。
フォームや奏法が整っていないとすぐに腕や肩が痛くなってきたり、管楽器だと呼吸が苦しくなってくると思います。
早い段階で腱鞘炎などの怪我を発症する人もいたり、長く続けていれば必ずどこか肉体的なトラブルを抱えることになります。
あと、単純に楽器や機材を運ぶのがきついというのもあったりします。
実は音楽活動って肉体労働なんですよね。
ただ、楽器というものは筋肉を鍛えて若い内に華々しく活動し、中年前で引退して第二の人生を模索するというスポーツ的なものではなく、歳を重ねるごとにリラックスし、より高い境地を目指すことができるという武道的な側面があります。
楽器を演奏することのきつさ、しんどさというものは、脱力をベースとした技術で乗り越えられるものです。
それを念頭に練習していくとだんだん肉体的には楽になっていきます。
楽しいことだけをイメージしてギターを購入し、いざ弾いてみると全然できなくて、一応は練習をしてみるも思っていた以上にしんどいことだらけでうんざりしている人……
そういう人は考え方を変えましょう。
そもそも楽器を習得するというのはしんどいことなのです。
スポーツを楽しむことと一緒です。
スポーツはどんなにライトなものでもしんどいし、怖いし、痛いし、疲れますよね。
でもそれも織り込み済みでやっぱり楽しいものです。
楽器もそれと全く同じです。
だから楽器や音楽というものに対し、改めて「しんどい」「辛い」「つまんない」という項目を加えましょう。
そしてそれも織り込んだうえで楽器や音楽は「楽しい」ものです。
そうでないと、ちょっとでもしんどいと挫折して放り出したり、あるいはしんどいことから逃げ回って結局なにも弾けないまま時間だけが過ぎていくという悲しい結果になってしまいます。