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八幡謙介ギター教室


ティンカーベル/YUKI 歌詞解説


八幡謙介ギター教室in横浜
基本情報

2005年発売

作詞・作曲:YUKI、Zuriani、Andy Lutschouning

ティンカーベル 公式MV

youtu.be

 

 

ストーリーを追う

今回はYUKIの「ティンカーベル」という楽曲を題材に、微妙なワードから歌詞のストーリーを追う練習をしてみましょう。

人によってははっきりとストーリーを立てる場合もあれば、ほんの一言でストーリー展開を示唆する場合もあります。

今回の歌詞は後者でしょう(YUKIが常にそうかは分かりませんが)。

 

歌詞のストーリーは、基本AメロBメロといったセクションごと、あるいは1番2番で展開するので、どこで変化しているかははっきりしています。

問題は、ストーリーがどう変化したかです。

では「ティンカーベル」のストーリーの変化を拾っていきましょう。

1 ティンカーベル登場

A

 毎晩 長いパレード ゆらしてやってくる

 レモネイドが冷めて灯りも消える頃

 キャンドル前並べて浮かぶあの笑顔

 パーフェクトにベイビーフェイス 赤いリップ

B

 はにかむ様子は ファーストレイディ

 声は甘くないソプラノ

サビ

 ティンカーベル 手を取って 虹の向こうまで連れてって

 黒い闇につかまれる前に

 ティンカーべル 小さな夢 大人になれないまま

 ティンカーベル 側にいるディスティニー

 

まずはざっくりAメロからサビまでで捉えましょう。

ティンカーベル(妖精)が毎晩出てきて目の前ではにかみ、主人公にしゃべりかけてきます。

主人公の年齢は、「小さな夢 大人になれないまま」というあたりから、思春期の前半ぐらいと推察できます。

中学生ぐらいでしょうか。

また、「黒い闇につかまれる前に」とあるので、何か悩みを抱えている様子がうかがえます。

とりあえずここからスタートして、どうストーリーが進んでいくのか?

2 成長、変化、別れの示唆

A

 パパのガレージに隠れて話そう

 週末の彼とデート 力を貸してね

 いつまでも変わらないことなんてないのに

 彼女の長い髪は永遠に輝く

  • B

  ネイビーブルー

  瞳はアーモンド 私を見る

サビ

 ティンカーベル 追い越した景色だけ変わってゆく

 広い海に飲み込まれるように

 ティンカーベル 言わないで

 終わりはあるってことを

 ティンカーベル 踊っていたいのに

 

2番に入ると、主人公とティンカーベルの関係性がガラっと変わっていることが読み取れます。

ただ、出来事が前後しているところがあり、整理しないと理解が追いつかないかもしれません。

 

まず、主人公はティンカーベルと友達になっています。

また、ティンカーベルがいる生活が当たり前になっている様子がうかがえます。

「パパのガレージに隠れて」というあたりが、ちょっといたずらっ子に成長していたり、男の子とデートするようになっているところから、2番は高校生ぐらいかなという気がします。

いずれにせよ、1番からしっかりと時間が経過していることが読み取れます。

Bメロの「私を見る」というのが唐突で?となりますが、これは終わりを告げることの暗示です(後述)。

 

サビの「追い越した 景色だけ変わってゆく 広い海に飲み込まれるように」がちょっと難解です。

文節ごとに分けると、

 

追い越した=自分の成長がティンカーベルを追い越した

景色だけ変わってゆく=自分は変わらない(つもり)なのに、自分を取り巻く環境はどんどん変わっていく

広い海に~=社会に飲み込まれていく

 

要するに、自分が大人に成長し、環境が変わってきたということです。

しかし、主人公はまだティンカーベルと遊んでいたいと思っています。

そんな中、ティンカーベルはアーモンドの瞳で主人公を見ながら、終わりを示唆してきます。

まだ大人になりきれていない主人公は、それが受け入れられません。

無邪気で可愛らしい成長から一転して切ない展開となります。

 

 

3 成人、回想 

ティンカーベル 楽しかった

思い出をなぐさめれば

もう一度会えるような気がする

心に咲く黄色い花 

枯れてゴミにまみれていても

何度でも水をそそいで

 

さて、ここで時間はぐっと先に進みます。

2番が高校生だとしたら、今は成人し、社会人3年目ぐらいでしょうか?

ティンカーベルはもう完全に消えてしまっています。

主人公はまだ忘れられないのか、もう一度ティンカーベルに会いたいと思っており、自分なりに考えた方法を実践しています。

「心に咲く黄色い花」はティンカーベルとの思い出の象徴でしょうか?

それが「枯れてゴミにまみれて」いるというのがちょっとゾっとする表現ですね。

それだけ大人の酸いも甘いも経験していることがうかがえる表現です。

4 エンドロール

ティンカーベル 手を取って

虹の向こうまで連れてって

黒い闇につかまれる前に

ティンカーベル 小さな夢 大人になれないまま

ティンカーベル そばにいるディスティニー

 

最後に、一番最初ティンカーベルが出てきたときのピュアな気持ちをもう一度歌っています。

映画だと、リアルを突きつけ、無慈悲に終わりを迎えた後、エンドロールで主人公の一番可愛かった頃を流すような感じです。

ちょっとずるい……

まあひとつ手前で「枯れてゴミにまみれて」とまで言ってしまっているので、さすがにそこで終わることはできなかったのでしょう。

 

 

総括

改めてストーリーの流れをまとめると、 

 

ティンカーベル登場

ティンカーベルとの友情、終わりの示唆

大人になってからの回想

エンドロール、一番綺麗な思い出の反芻

 

 

このように、よくできた短編映画のようなしっかりした構成を持った楽曲だとわかります。

歌詞というと抽象的でふわふわしたものという印象が強いですが、しっかり読み込んでみるとこういった論理的な構成を持ったものも意外と多いのがわかります。

歌手の方はその辺をしっかり読み込んでいくようにすれば、歌に説得力が出てくるはずです。

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ティンカーベル
ティンカーベル

ティンカーベル

  • 発売日: 2019/10/01
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