昨年末、たまたまプロ作曲家の動画をいくつか観ていて、そこで言っていることにはっとさせられたので書いておきます。
何の動画だったか忘れたので貼ることはできません。
以前、これからプロを目指す人が目上の人に作品を観てもらうとき、全力出さないと意味ないよということを書きました。
奇しくもあるプロ作曲家の方も同じことを言っておられました。
ひとつ違うのは、若手の作曲家が既にプロ活動していて、しかも名指しで作曲依頼を貰っているのにもかかわらず、全力でデモを作ってこないということでした。
これまで僕は、さすがにプロでそんなやつはいないという認識でしたが、どうやらいるようです……
動画の作曲家の方も意味がわかんねーと嘆いておられましたが、僕も同じ心境で観ていました。
その若手がその後どうなったかは触れられていませんでしたが、そんなんでやっていけるのか疑問です。
自分が育成している若手が、つくっている楽曲のメロディをあれこれと悩んで差し替えているのを見て「何してんだよお前、なんでもいいからさっさと出せ」みたいなことを言ったという話。
これだけだと一見スピード重視で中身のない適当な仕事をさせていると思ってしまいますが、そうではなく、その作曲家曰く「メロディがいいかどうかを決めるのはお前じゃない、だからお前が悩むのはおかしいし時間の無駄」ということだそうです。
確かにそうですよね。
多少なりとも創作をしたことがある人なら分かると思いますが、作品の評価って自分の予想と大きくずれることがほとんどです。
絶対に高評価を得られると確信している作品がスルーされたり、逆に適当につくったものがめちゃくちゃバズったり、こんなん出したら怒られる、炎上する……と思っていたら高評価されたりすることがよくあります。
「お前が決めるな」と叱った作家さんも、ヒットした自分の曲のどこがいいのかわからないのだそうです。
偉人の例で言うと、かの三島由紀夫も渾身の大作である「鏡子の家」が文壇から完全にスルーされてめちゃくちゃ落ち込んだという話も残っています。
これ、今ではちゃんと評価されていますし、僕は大好きなんですけどね……。
僭越ながら僕の例でいうと、「ギタリスト身体論」を出す際は『こんな本だしたら全ギタリストから総叩きに遭い、今後ギターで表に出られなくなる、俺のギタリスト生命は絶たれる』と本気で思っていました。
なら出すなよって話ですが、結果は幸い真逆でした。
なので、どんな地位にいようが、作品の良し悪しを自分で決めずにさっさと作ってさっさと出し、後はそれをチェックする担当者や世間の人に評価をゆだねるというのがクリエイターの正しい創作態度だったりします。
商業クリエイターならなおさらでしょう。
「良いか悪いかお前が決めるな」というのは、創作の酸いも甘いも知り尽くした人が言える含蓄のある言葉なのです。