レッスンで何かを教えていると、必ず停滞期が訪れます。
生徒さんは皆一様に、先に進まないことにうんざりします。
そんなときにどう対応しているのかというお話。
停滞を打破するのに最も手っ取り早い方法が、トピックを変えることです。
違う曲をやってみる、違う内容を教えてみる、などなど。
実はこれは絶対NGな方法です。
確かにトピックを変えると停滞感は消え去ります。
生徒さんは肩の荷が下りたように楽になり、気分もリフレッシュして、また楽しくレッスンを継続してくれます。
ですが、この時点で生徒さんは根本的なレベルアップはまだしていません。
ただ単に問題を先送りにしたまま内容をリフレッシュしただけです。
ということは、新しいトピックを進めていけば、また近いうちに同じ壁に到達し、同じところで停滞することになります。
「でもそうやってどんどんトピックを変えていくことで、どこかにその人に合ったレベルアップのルートを見つけることができるのでは?」と思うかもしれません。
僕も以前はそう思っていました。
が、どうやらそんな都合の良いものは存在しないということがやっと分かってきました。
例えばギターならギターを練習し上達していくという過程において停滞期が訪れるというのは、単なるトピック選びの良し悪しではなく、もっと根源的なところに起因しています。
少なくともルートを変えたら簡単に越えられるというものではありません。
実際トピックを変えても同じレベルに到達すればまた停滞期が訪れます。
だったらトピックを変えてリフレッシュなどという小手先の対応をせず、同じことを続けるべきでしょう。
そう考えて、近年レッスンではよっぽど意義がない限り内容をコロコロ変えないようにしています。
実際生徒さんの要望に従って内容をコロコロ変えて無茶苦茶になったことも何度もあったので。
トピックを変えたところで結局また停滞するところでするので、変えずになんとか停滞期を乗り切るべきだというのは理解できると思います。
とはいえ停滞はしんどいものです。
いっそやめたら楽になれるのに……と誰もが考えることでしょう。
もちろん僕も何かに停滞する度にそういう考えが頭をよぎります。
この停滞期をどう乗り越えればいいのか。
とりあえず大事なのは、やめないことです。
そしてまず、「まだやめない」という状態が停滞ではなく前進であることを認識しましょう。
これは気休めや励ましではなく、事実です。
そもそも何かを続けていれば停滞期は必ず訪れます。
そして、そこで多くの人は自分と同じように「もうやめよう」と思い、本当にやめてしまいます。
そんな中、たとえ全く先が見えなかったとしてもまだやめないとしたら、少なくとも自分は継続していることになります。
継続している人はやめた人よりも先にいます。
つまり、「まだやめない」という状態でいることで自分はやめていった人よりも前進しているということになるのです。
まあ多少後ろ向きな考え方かもしれませんが、事実は事実です。
結局のところ、停滞期を打破するには「まだやめない」を続けることが一番です。
そうすると思わぬところでヒントを見つけることができたり、まだやめないことで知らない間に積み重なってきたものが実を結ぶということが起こり得ます。
ですので、僕は生徒さんが停滞期に入り、悩みはじめたときこそ同じ内容を継続させるようにします。
このときの講師側の取るべき態度というのもあるのですが、それは企業秘密です(以前コンサルで教えていましたが)。
然るべき態度を取っていると生徒さんは停滞期でも同じトピックを継続してくれますし、レッスンもやめずに続けてくれます。
停滞期の生徒さんに講師がNG行動やNGワードを頻発すると、生徒さんは潰れてしまい、トピックどころらレッスンもやめてしまいます。
薬物依存の人が薬物から脱却する際、「今日薬をやめられた」を毎日継続していくことが大事なのだそうです。
恐らく停滞期の脱却はそれと逆で「今日はまだやめてない」を毎日継続することが大事なんだと思います。
薬物に例えんな!と怒られそうですが、実際「やめる」という行為には麻薬的な快楽が伴うのも事実です。
一瞬で全てが楽になり、得も言われぬ開放感に包まれるけど、やがてその行為がじわじわと自分を蝕んでいき、後で必ず後悔が訪れるという意味で麻薬ととても似ていると言えるでしょう。
練習はする気がしない、もうギターのことを考えたくもない、一生上達する気がしない、でも「もうやめた!」という宣言はまだしていない、今日はまだやめてない……
この状態を継続することが停滞期を乗り越える第一歩です。
今何かで停滞して苦しんでいる人は、何もしなくてもいいから「まだやめない」を継続してみましょう。
それだけで間違いなく先に進んでいることになります。