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ジャズに人が集まらない理由 16 サプライズやハプニングが通用していないから


八幡謙介ギター教室in横浜

ジャズの世界では、よく「ハプニング」と「サプライズ」について言及されます。

それらは概ね以下の定義となっています。

 

ハプニング

リハーサルも十分とらないぶっつけの演奏をすると、そこにハプニングが生まれるから演奏が面白くなる。

サプライズ

即興演奏では本番で何が出てくるか分からない、だからサプライズ効果が生まれ、演奏が面白くなる。

 

だいたいこんなことがよく言われます。

しかし、改めて考えてみると、これらが現代では十分に機能していないことが分かります。

だって、それが面白かったら観に来るじゃないすか?ww

耳の肥えたリスナーがいないから? メディアが取り上げないから? 音楽シーンがクソだから?

いえいえ、違います、ジャズのサプライズやハプニングがつまんないんです!

以下、それぞれを考察してみましょう。

 

 

まず「ハプニング」について。

これは単純に、めんどくさいことを回避するための言い訳です。

ぶっつけだからハプニングが起こるということにしておけば、リーダーは本番までに曲を決めて通達する必要もなくなるし、メンバーもいちいち本番前に集まらなくてすみます。

では実際のジャズの演奏で本当にハプニングが起こっているのかというと、そんなことはめったにありません。

なんでかというと、基本的に皆間違えないように演奏しようとするからです。

僕もそうでした。

だって、また使ってほしいですからね。

ハプニングを起こして睨まれるより、上手にこなして仕事の可能性を増やす方が得に決まっています。

でもめんどくさいからリハは嫌、というのがおおよそのジャズミュージシャンのメンタリティです。

で、これではいかん! と一念発起し、ハプニングが起こる仕掛けを最初から考えて、自分がリーダーのライブで、リハをちゃんとして趣旨説明までしたこともあったんですが、やっぱり本番で上手に弾かれてしまい、ハプニングにならなかったということもありました。

それが僕の(たぶん)最後のライブでした。

もうひとつ、「即興演奏では誰が何を弾くかわからない」というアレですが、本当にそうですか?

本当に本当にそうですか??

いや、嘘はよくないですよ。

初見で初顔合わせだったとしても、ちょっと合わせたらだいたいどのパターンか分かるじゃないですか?

そこで瞬時に「ああ○○系か、じゃあこっちはそれに合わせてこんな風にしようかな」と対応すると思います。

 

 

二回目以降ならもうだいたい弾く前から見当ついてるはずです。

本当のサプライズって、「うわ、何だこりゃ? どうしたらいいのかわかんねー! でもどうにかしなきゃ…」ぐらいのテンパった状況だと思うんですが……。

 

しかしここからが重要なところです。

ジャズミュージシャンの中には、本当になにやってるのか分からん「サプライズ」な演奏をする人はいます。

が、そのライブに人は集まってるでしょうか?

その方は人気があるのでしょうか?

失礼ながら、そうではないと言ってさしつかえないと思います。

なぜかというと、サプライズが自己完結しているからです。

どれだけサプライズに満ちた演奏をしてもジャズに人が集まらないのは、おそらくそれが観客に向かっていない、単純に言えばエンタメしていないからだと僕は思います。

逆に言えば、サプライズがきっちりエンタメしていれば「なんだなんだ」と人は集まってくるのです。

 

 

最近の例で言うと、BABYMETALがそうです

はい、ジャズメンの大嫌いなアイドルです。

彼女たちがブレイクしたのは2014年です。

YOUTUBEで彼女たちのパフォーマンスを見て、世界中の人たちは驚愕し、ぜひライブをしてほしいとあちこちのメタルフェスに招待され、名だたるメタルアーティストと競演を果たしています。

サプライズが人を集めた証拠といえるでしょう。

じゃあジャズミュージシャンはどうすればいいのか? と言われると僕にも分かりません。

しかし、このシリーズを書いていてなんとなく思ったのは、別にもうジャズにサプライズもハプニングもいらないんじゃないかと。

サプライズやハプニングがジャズの専売特許だった時代は、半世紀前に終わっています。

また、無理して新たな(ハーモニー上の)サプライズを推し進めても、何も広がらないどころか、よけいジャズの間口を狭めているということは、ミュージシャンもファンも十分分かってるはずです。

これからのジャズを考えたとき、僕には「サプライズ」と「ハプニング」は、もう外していい項目のように思えます。

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