音楽講師をしていると、必ず直面するのが練習してこない生徒や、やる気がない生徒。
(「やる気」という言葉は嫌いですがここではあえて使います)。
そんな生徒につい怒りを覚えて不機嫌になったり怒鳴ってしまったという講師さんは沢山いらっしゃるでしょう。
僕も昔はそんな時期もありました。
が、今は生徒さんが全く練習してこなくても、ぜんぜんやる気がなくても特に何も感じません。
というのは、以下のように考えているからです。
まず前提として、楽器の習得には長い長い時間がかかるものです。
個人的には最短で10年単位で継続しないとなにも出来ないと考えています。
これは講師をやれるぐらいに楽器を習得された方なら全員理解できることでしょう。
これを前提として以下のように考えます。
さて、楽器を習得するための練習を継続していくと、いろんなことが起こります。
朝から晩まで弾いている時期もあれば、全然手が付かない時期もあります。
練習が何よりの楽しみだという時期もあれば、楽器なんて見たくもないという時期もあります。
音楽が大好きで楽器を始めたのに、なぜか嫌いになる時期もあります。
そういったアップダウンは、長年楽器をやっている講師さんなら絶対に経験しているはずです。
そこで練習してこない生徒さんや、やる気を見せない生徒さんに出会ったとき『あ、この人は長い長い楽器の習得期間の中で、今はたまたまそういう時期なんだ』と思うと、まあしょうがないかという気持ちになり、寛大に接することができるようになります。
個人的に「やる気」という言葉は嫌いで、以前にも記事に書いたことがあります。
ここでは一般用語として使います。
やる気がない生徒さんは、ある意味練習をしてこない生徒さんよりもやっかいで、扱い辛いものです。
ただ、その「やる気」の判定基準を変えるとまた考え方も変わってきます。
多くの講師さんは、練習量や受講時の熱量、意欲、質問の量などでやる気を量っていると思います。
僕も昔はそうでした。
しかし改めて考え直すと、そもそも生徒さんがちゃんと教室に来ているという時点ですごいことだと分かり、それ以降僕の「やる気」の判定基準はレッスンに来るか来ないかになりました。
当然、レッスンに来ている=やる気があると判定するので、それ以上のものは基本求めません。
だからレッスンに来たけど課題をやっていない、雑談ばかりする、何もしゃべらない……という状態でも怒りが湧くことはありません。
まあ、あまりに酷い場合はまた別ですが。
そもそも、安くない月謝を払って月数回決まった時間に決まった場所に行くということだけでも相当な労力です。
ほとんどの人はそんなことできません。
そんな中、自分から何かを吸収するために決まった時間に間に合うように教室に来てくれたという時点で既に十分「やる気」はあります。
もちろん、本当はそれだけではなく、課題をやってきたり質問をしたりすることも大事ですが、そもそも教室にちゃんと来ているという時点で最低限の「やる気」とか「モチベーション」はクリアしていると判定するべきでしょう。
そう考えると教える方もかなり楽になります。
こう考えるようになってから、明らかに生徒さんの継続率が変わりました。
近年ではちょっとだけ来てすぐに辞める人は減り、最低でも1年は続くのが当たり前となっています。
コロナ渦でも同じです。
生徒さんの方でもなにかしらの心地よさを感じていただけているのだと思います。
練習してこない生徒さんにイライラしてしまう、やる気がない人には教える気がしないという講師さんは一度考え方を改めてみましょう。