僕は速弾きの専門家ではありませんが、教室ではある程度までは教えています。
今回は「ギタリスト身体論3」で公開した八幡式ピッキングにおける速弾き理論をご説明します。
そもそも、速弾きの目的とは何か?
言うまでもなく、<速く弾く>ことです。
しかし多くの人が<速く腕を振る>ことを目的にしてしまっています。
腕を速く振っても意外と速く弾けないことは、速弾きを練習していれば分かります。
また、腕(指、手首)を速く動かそうが動かすまいが、結果的に速く弾けてればいいはずです。
ではどうすれば速く弾けるのか?
まずは<速さ>を理論的に考えてみましょう。
理論を分かりやすくするために、速弾きをオルタネイトピッキングに限定して考えてみましょう。
オルタネイトピッキングとは、弦を往復するピッキングです。
ここに距離が存在します。
では弦を往復する距離が長い場合と短い場合、どちらが速く弾けるでしょうか?
当然、短い方が速く弾けます。
ということは、オルタネイトピッキングをする場合、弦を往復する距離はできるだけ縮めた方がよいということが分かります。
次に、弦を往復する距離と、それにかかる時間を考えてみましょう。
a:片道2㎝
b:片道1㎝
片道2㎝と1㎝の振り幅でオルタネイトピッキングするとします。
一往復するとそれぞれ4㎝、2㎝の距離となります。
仮に秒速4㎝とすると、aは一往復1秒、bは0.5秒となります。
これを音楽的に考えてみましょう。
仮に4分音符=60の曲があったとしましょう(あまり現実的ではありませんが、分かりやすくするために)。
この場合1拍は1秒となります。
その曲で8分音符をオルタネイトピッキングするとします。
aの振り幅であれば4㎝/秒で往復すればちょうどいい計算になります。
しかし、bの振り幅だと速くなってしまうので、2㎝/秒に落とさないといけなくなります。
このように、同じテンポ・同じフレーズでもピッキングの振り幅が変わるだけでピッキングに要求されるスピードが変化します。
今度は現実的なテンポで考えてみましょう。
4分音符=120とします。
4分音符1拍は0.5秒、8分音符が0.25秒となります。
ピッキングの振り幅が片道2㎝の場合、4分音符を4㎝/秒、8分音符を8㎝/秒で弾く必要があります。
しかし、ピッキングの振り幅が片道1㎝であれば、4分音符を2㎝/秒、8分音符を4㎝/秒で弾いても同じフレーズを遅れずに弾くことができます。
結果、振り幅を短くすることでゆっくりピッキングしているのに同じテンポで同じフレーズが弾けることになります。
八幡式ピッキングで速弾きをするときは、このようにゆっくり弾いても間に合うようにピッキングラインを詰める作業をしていきます。
では短い距離でピッキングすればいいということになりますが、これがそう簡単にはいかないのです。
というのも、ピックの持ち方次第でピックが弦に負けてしまうからです。
例えば、ピックをゆるく持ってピッキングすると、弦にヒットしたとき一瞬ピックが弦にひっかかってからピッキングが行われます。
この分発音が遅れるのと、一度弦にひっかかってから振り抜くことでピッキングの振り幅が膨らみます。
その状態で速弾きするためには、ピッキングの速度を上げる必要があります。
その結果、速く腕を振る必要性が出てきます。
そうならないためにはピックが弦に負けない持ち方をする必要があります。
その答えはギタリスト身体論3に「MP関節のロック」として書いてありますので、そちらを参照してください。
MP関節をロックすることでピックが弦に負けなくなります(それだけではなく、音もよくなります)。
その結果、ピッキングの距離を大幅に縮めることが可能となります。
これだけでピッキングはぐんと速くなります。
実際レッスンで速弾きを教えていて、フォームを直すとテンポが20ぐらいすぐに上がります。
長々と理論を説明しましたが、要約すると、
- ピッキングの距離を短くしよう
- 距離が短くなればその分ゆっくり弾いても間に合う
ということです。
とすれば、距離を短くして同じ速度で弾けばちょっと速くなりますよね?
さらに、距離を短くして少し速く弾けばかなり速くなります。
これが僕の速弾き理論です。
もちろん、これだけでどんな速弾きも簡単に弾けるというわけではありません。
が、一般的に速弾きと言われているものはだいたい弾けるようになります。
こうしたことに興味がある人は教室まで。
ただ、僕は速弾き専門家ではないので、専門的に習いたい人はそっちの先生を探してください。
八幡謙介の速弾き動画はこちら。
速弾き専門家ではないのでこれしかありません。