サークルピッキングというピッキング法があります。
これは親指の屈伸を利用してピックが楕円を描くように往復するピッキングで、速弾き系のギタリストに多く採用されています。
これ自体が悪いわけではないのですが、ここに非合理性が存在することをはっきりと認識しているギタリストは少ないのではないかと思います。
そこで今回は、サークルピッキングにおける非合理性を認識することで、僕が提唱する「ピッキングライン」というものについて認識してもらいたいと思います。
「ピッキングライン」とは、ピッキングしたときにピックが描くラインのことです。
詳しくは「ギタリスト身体論3」で説明しています。
こちらはナンバリングされていますが3だけ読んでも理解可能です。
僕は「ギタリスト身体論3」にて、真っ直ぐなピッキングラインを描くことの重要性を説き、そのためのフォームを提唱しています。
それが一番合理的だからです。
ではサークルピッキングで描くラインと、真っ直ぐなピッキングラインを比較してみましょう。
下図は弦に対して真っ直ぐ引いたラインと楕円を描くラインの比較です。
この線に沿ってピッキングすると考えてもいいでしょう。
いずれも始点、終点は同じとします。
(趣旨を理解してもらうために分かりやすくラインを描いています。実際にピッキングするとき必ずこうなるわけではありません)
さて、真っ直ぐなラインと楕円形のラインの往復距離を考えてみましょう。
単純に比較して、楕円形の方が距離が長いですよね?
ということは、同じスピードでピッキングしたとき、楕円形のラインを描いた方が遅いということが分かります。
楕円形のラインでピッキングしつつ、直線と同等の速さをキープしようとすれば、より速くピッキングしないといけないということが分かります。
楕円形のラインを描くことで、わざわざピッキングの距離を伸ばし、そしてそのためにピッキングスピードを上げなければいけなくしているのです。
非常に非合理的なピッキングラインです。
また、一定のタイムをキープする場合、同じラインを再現し続ける必要があります。
往復する度にラインが変化すれば、そこにかかる時間も当然変化するので、タイムがキープし辛くなります。
そこで改めて直線と楕円を比較してみましょう。
どちらのラインが再現性が高いでしょう?
当然、直線です。
同じ半径の楕円を描き続けるのは至難の技です。
ですから、楕円形のラインでピッキングし続けるとタイムにムラが生じやすくなります。
一方、同じ直線を往復するのは比較的容易です。
以上のことから、僕は直線のピッキングラインを描くことを推奨しています。
その方が距離が短いのでゆったりと弾けるし、再現性も高いのでタイムがキープしやすくなります。
もちろん、今現在サークルピッキングを採用しており、それで演奏に何の支障もないという方はそのままで結構です。
ただ、これからギターが上達したい、プロを目指したい、あるいはサークルピッキングに限界を感じている、不具合を感じているという方は「ピッキングライン」について再考することをおすすめします。
こちらはピッキングラインと距離について解説したものです。