ジャズネタをもっと読みたいといったご意見を時々いただくので、あれこれ考えていたらふとジャズベーシストにされた仕打ちを思い出したので、成仏させる目的で書いておきます。
その前に言っておきますが、僕はジャズベーシストに何の恨みもないし、むしろウッドベースはジャズで一番格好いい楽器だと思っています。
ただ、僕にひどい仕打ちをしてきたジャズミュージシャンを思い出したところ、なぜか全員ジャズベーシストだったというだけです。
ジャズをはじめてまだ3年も経っていない頃、とあるワークショップに出席していました。
その日は主催者の先生に加え、ゲストでプロのベーシストが来るようでした。
早々と会場のスタジオに着くと、ゲストのベーシストの方が既に座っておられました。
傍らにウッドベースがあったので一目で分かりました。
もちろん挨拶をしたんですが、その人はものすごく寡黙で仏頂面で、それ以上一切会話になりません。
会場には僕とそのベーシストのみ。
防音のスタジオは氷ついたような空気になってしまいました。
たまらずに、その日の課題を取り出し、震えながら「ちょ……これ…伴奏とかしてもらっていいですか?」と切り出してみました。
するとそのベーシストは仏頂面をより曇らせて「え?ベース弾けっての?」とものすごく嫌そうな言い方で反応してきました。
僕はもうその瞬間後悔と恐怖でパニックになりましたが、今更やっぱいいですとは言えずにお願いし、課題曲のテーマか何かを1回弾いて「あ、ありがとうございました……」とお礼を言いました。
そのベーシストは相変わらず仏頂面で「ふんっ」みたいな感じでベースを置きました。
まあ今になって考えれば、まだ何も弾けないガキにワークショップも始まってないうちから伴奏してくれと言われたらちょっとイラっとくるかもしれません。
しかしあそこまで不機嫌丸出しで怖がらせる必要はないし、主催者のワークショップに雇われて来ている立場ならなおさらそこの生徒さんを怖がらせるのはNGでしょう。
大人と子供、プロと学生といった立場を考えれば、自分(プロ)から場を和ませてあげるべきだと考え、一言二言声をかけてあげてもいいはずです。
しかしそのベーシストは本当にあいさつ以外自分からは一言も発しませんでした。
あの張り詰めた嫌な空気は今でもありありと思い出せます。
あの人がどうしてあそこまでひどい態度を僕にとったのかいまだに謎ですが、僕の中では反面教師としています。
ただ、この出来事でジャズベースやジャズそのものが嫌いにはなりませんでした。
海外から帰ってき、さてこれから日本でジャズミュージシャンとして頑張っていくかとあちこち出向いていた頃、知人のツテで某ローカルプロのベーシストとつながりました。
そしてすぐにジャズらしく、「いついつのライブにギターもって来なよ」と、飛び入りを参加を打診され、もちろんOKし当日向かいました。
全員初対面でしたが分かりやすいスタンダード中心だったので楽しく参加させてもらいました。
僕が感じたかぎりではお客さんもたいへん盛り上がっていたようでしたし、他のメンバーさんもニコニコしていたので成功だと思い、帰路につきました。
しかしその晩、早速そのベーシストからメールが来たのですが、それがどうとでも取れるような言い方でやんわりと僕の演奏を否定している内容でした。
確か、
「今日は君の本来の持ち味が出せなかったようで残念です」
みたいな文面だったことを覚えています。
こんな嫌みな言い方、京都生まれの僕でもミュージシャンに使ったことないですよwww
しかも、自分では持ち味をかなり出せたと思ってほくほくと帰路についたのに……
今考えたら、アムステルダムで培ったガツガツした感じがその人の気にいらなかったのかもしれません。
とはいえ、何度読み返しても具体的に僕がどうすればいいか全く分からないし、文末に「色々言いましたがこのメールは忘れてください」とも書いてあって本当に困惑しました。
いずれにせよかなり意気消沈し、そして、将来がものすごく不安になったことを覚えています。
今自分が人に教える立場になって、改めて考えてもやはりあのベーシストのメールは意味不明だし、立場として不適切だと断言できます。
これから頑張ろうとしている人には、多少荒くても褒めてあげるか、逆に何をどうすればいいかはっきりと指摘してあげるべきでしょう。
どうとでも取れる言葉で自分を守りながら真綿でやんわりと絞め殺すようなことを言うべきではありません。
まあこういったところに日本のジャズの悪いところ、もっと言えばジャズベースという立場、立ち位置の悪いところがよく出ています。
もっとありますが意外と長文になったので今回はこのへんで。