八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

プロを目指している人は、「好き」と距離を置く訓練をしておいたほうがいい


八幡謙介ギター教室in横浜

何かが好きで、その道のプロになりたいと思う人は多いと思います。

横浜ギター教室にもそういった人が相談に来られます。

 

プロを目指すとき、いろんなやるべきことがありますが、僕がひとつおすすめしておきたいのは「好き」と距離を置くことです。

というのも、「好き」に支配され、「好き」故に道をあやまり、あるいは「好き」故に先に進めずに最終的にプロになれなかった人が多くいるからです。

 

例えば、好きなアーティストのスタイルを真似し続ける人。

憧れのアーティストになりたいあまり、その人そっくりに歌ったり楽器を弾いたりするというのは誰でも通る道です。

しかし、それではプロにはなれません。

もちろんプロのものまねアーティストになりたければそれで構いませんが、自分というオリジナルアーティストになりたいのなら、一秒でも早く「オリジナルは世に一人、それ以外は必要ない」と気づくべきです。

だいたいプロになる人はどこかの段階でそれに気づき、オリジナルを目指します。

それが「好き」と距離を置くということです。

あるアーティストが好きで好きでたまらない、でも自分はその人ではない、自分はその人にはなれないけど、その人もまた自分にはなれない、だから自分にしかできないことを目指そう! と考え、実行し、どうにか形にすることができれば世に出ることはできると思います。

 

また、そうした憧れのアーティストと自分という関係性だけではなく、自分自身の「好き」も自分を縛り付け、成長を阻んだり、時には人間関係を壊す要因となることがあります。

 

「好き」という感情は人間に活力や生きる希望を与えてくれますが、同時に嫉妬や怒り、束縛、果ては暴力を生むこともあります。

そこまで大きいことではなくても、「好き」のせいで自分が見えなくなっているということは多々あります。

ギターでいうと、自分が好きな音をつくるとだいたいアンサンブルで抜けなくなります。

ベースやドラムなどと帯域がかぶるからです、

そこで「好き」と一旦距離を置き、アンサンブルの中で抜ける音、アンサンブルに貢献できる音を作るようにするとミュージシャンとしての評価は上がるでしょう。

 

また、自分の「好き」を否定するようなアドバイスを受けたとき、ほとんどの人は拒否反応を示してしまいます。

それが自分を成長させてくれるような的確なアドバイスだったとしたら、拒否するのはもったいないですよね。

そこでぐっと我慢して「好き」と距離を置き、一度そのアドバイスを聞き入れてみるとひとつ成長できるかもしれません。

 

このように、「好き」にはいい面もありますが、さまざまなトラップも仕掛けられています。

「好きを仕事に!」というと夢があって明るい気持ちになりますが、「好きを仕事」にするためには実は「好き」と慎重に距離を保たないといけないのです。

 

では「好き」と距離を置くためにはどういう訓練をすればいいのでしょう?

簡単にできることは、あえて「好き」の対象への批判を探すことです。

誹謗中傷やバカにしたような意見は無視して結構ですが、自分が好きな対象を論理的に分析し、ディスや中傷ではなくちゃんと批判している記事や動画があれば、じっくりと読んで(観て)、考えてみましょう。

怒りや苛立ちはぐっとおさえて、理解できるところは飲み込み、受け入れる努力をしてみます。

最初は苦しいかもしれませんが、なれてくると「好き」を保ちつつ同時に批判も受け入れられるようになってきます。

例えば僕は乃木坂が好きですが、アイドルへの批判もちゃんと理解していますし、曲や歌詞、ライブ映像は好きなのですがCDの音質は最悪だと思っています。

また、ジャズミュージシャンなのにジャズを徹底的に批判しているのも同じです。

そんな僕を理解できず、「こいつはジャズが嫌いで恨みがあるからジャズをディスっているんだろう!」と決めつける人がいっぱいいましたが、そういう人は「好き」と距離を置けない人です。

実際、プロのジャズミュージシャンからは共感のメールやDMをいっぱいもらいましたし。

 

これからプロを目指す人はそういったことも考えてみてください。

プロの世界は「好き」だけで渡れるほど単純ではないので。