これまでにご紹介したコーラスの終わり方についてまとめてみましょう。
1、コーラスをまたがない
2、「合体」でコーラスをまたぐ
3、「侵入」でコーラスをまたぐ
現在この3種類の処理方法があります。
実はこれ、それぞれに明確なメッセージが存在します。
メッセージとは、ソロイスト(アドリブを行っている自分)がアンサンブルやリスナーに対して「自分はこうしたい」「今はこういう段階だよ」と発している内容のことです。
また、これは「こっち行くよ」「ギアあげるからついてきて」というディレクションでもあります。
こうしたメッセージを把握しながらアドリブするだけでより全体が締まっていき、ジャズのアドリブ特有の流れや会話が生まれやすくなっていきます。
では上記3種類のコーラス終わりでどういったメッセージを発しているのか見ていきましょう。
コーラス終わりで一旦フレーズをまとめ、次のコーラスの頭まで待ってからフレーズを弾き始めるケース。
このときのメッセージは、<抑制>です。
「一旦仕切り直し」
「落ち着いていこう」
「まだ崩さないよ」
「まだドライブしないから」
「まだギア上げないで」
というメッセージが聞こえてきます。
当然、アンサンブルやリスナーはそれを受け取りつつアドリブを楽しみ、反応します。
「合体」に関しては前回の記事をご覧下さい。
このときのメッセージは<スイッチオン>です。
「ジャズっぽくしていくよー」
「ギアあげてくからよろしく」
「テンション下げないでね」
といったメッセージが聞こえてきます。
まあ「合体」はジャズにとっては通常運転でもあるので、ここには特に深いメッセージやディレクションはありません。
「合体」でコーラスをまたぐと、ジャズスイッチを入れてジャズらしくガンガン行こうぜ的なノリが出ます。
「侵入」については前回記事をご覧下さい。
このときのメッセージは<ドライブ>です。
「テンション上げてくよ!」
「ついてきてね」
「ダイナミクス上げるよー!」
「ここから展開変えてくよー!」
ギアをさらにグンと上げてドライブし、皆を引っ張っていく感じになります。
もちろん「侵入」にもいろんなパターンがあり、まだまだ抑制してアドリブしていくことも可能です。
ただ、一般的には上記のようなメッセージが出やすいので注意が必要です。
よくあるのが、なんとなく「侵入」でコーラスをまたいだらアンサンブルが反応してダイナミクスがグンと上がった→なんかそれにビビってまた抑制するようなアドリブに戻してしまった→アンサンブルとソロのテンションがちぐはぐになり謎の展開に→もうそこから立て直すことができずに後はお茶を濁すだけ……というパターン。
「侵入」でテンションを上げたなら、よほど明確な意図がない限りそこから絶対に下げてはいけません。
こうしたことが分かってきたら、「コーラス終わりに何をしているのか」をテーマにジャズの名演名盤を聴き直してみましょう。
意外ときっちりコーラスをまとめてまた頭から始めるプレイヤーもいれば、最初からずっと「合体」でコーラスをまたぐプレイヤー、ここぞというときに気持ちよく「侵入」し、ギアを上げるプレイヤーもいます。
また、それぞれのケースでアンサンブル、特にドラムがどう反応しているかもチェックしましょう。
コーラス終わりの処理のパターンが分かってくると、ジャズをより深く理解することができ、ジャズのアドリブがもっと面白くなってきます。