アドリブがある程度できるようになってくると、フレーズでコーラスをまたぐことを練習します。
なぜコーラスをまたぐかというと、「逸脱」と「予告」のためです。
<逸脱>
これはこのブログで何度も言っていますが、ジャズをジャズたらしめるための考え方です。
正しい何かから逸脱した表現をあえてとることで、ジャズがよりジャズらしくなっていきます。
コーラスの終わりという音楽的に大きな区切りをあえて無視して、フレーズでまたぐことで逸脱感が生まれ、ジャズらしさが強くなります。
<予告>
仮にコーラスの頭から『このコーラスこんな雰囲気で行くよ』とフレーズを弾いたとします。
すると伴奏者はそこから一瞬遅れて反応することになります。
まあそれもライブ感があっていいのですが、できれば頭の1拍目でバチーンと合わせたい、ではどうすればいいかというと、ソロがコーラス頭より前に『次のコーラスこんなんで行くよ』と次のコーラスを示唆するフレーズを始めればいいのです。
するとそれを受けた伴奏者が次のコーラスの頭でその雰囲気に最適な伴奏に切り替えられます。
コーラス終わりから次のコーラス頭を同じフレーズでまたぐことには、このような意味があると僕は考えます。
ではフレーズでコーラスをまたげたらそこで目的は果たしたのかというと、そうではありません。
ここに新たに責任が生まれます。
責任とは、予告した内容をやり遂げることです。
『つぎこんなフレーズで行くよ』とコーラスをまたいだからには、次のコーラスはそのフレーズに刺激を受けた展開を作る責任があります。
例えば比較的押さえたソロからパワフルなフレーズで次のコーラスに侵入していったとしましょう。
そうなるとだいたい、ドラムはハイハットやブラシでのスネアワークからライドへ、それを受けてベースも2フィールからウォーキングへと変化します。
もちろんピアノなどの伴奏も変化してくるでしょう。
なぜそうなるかというと、ソロが『次のコーラスはこんなフレーズで行くよ』と変化を指示したからです。
その指示に従ってバンドが変化したのに、当のソロがさっさと最初のフレーズを捨てて、またいつもの感じに戻ってしまうとバンドのテンションがチグハグになってしまいます。
特にドラマーはこういう展開を嫌うと思います。
フレーズに反応し、せっかく楽器を変えてギアを上げたのに、それを指示したソロのギアが上がっていなかったら『チッ、何だよ…』『せっかくギア上げて、どうすんだよこっから…』と思うでしょう。
ですから、コーラスをフレーズでまたぐのはそれ自体が目的ではなく、その先の展開に責任を持つことが重要なのです。
ただ、最初はコーラスをまたぐだけでも精一杯なので、それができるようになるとそこで安心し、またいだ後も何も変わらず同じように続けてしまいがちです。
せっかくしんどい思いをしてハードルをなんとか越えたのに、その先にまだしんどいことがあるというのはなんの罰ゲームかよと思ってしまいますが、ジャズとはそういうものだと考えるしかないでしょう。
ただ、自分で予告した展開にきちっと責任が取れるようになると、アンサンブルを指揮しつつ会話するというジャズ独特のコミュニケーションができるようになるので、楽しくはなります。
そういったことを詳しく知りたい人は横浜ギター教室までお越し下さい。