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ジャズのアドリブにおける「侵入」がなぜ難しいのか


八幡謙介ギター教室in横浜

前回の続きです。

k-yahata.hatenablog.com

コーラスから次のコーラスに移る際、フレーズで侵入していくように弾くとジャズらしさがぐんと上がるというお話でした。

今回はなぜこれが難しいのかをご説明します。

コーラスの段取り

ジャズの楽曲では、ほとんどの場合、1コーラスで楽曲が一旦終了します。

そして、心機一転次のコーラスが始まります。

ジャズの楽曲は、最初から最後までで「1曲」なのではなく、だいたい12~32小節の1コーラスで「1曲」となります。

その1曲を何度も何度も繰り返して演奏するというイメージです。

ハーモニー的にもそういう段取りが組まれていることが多く、ほとんどの楽曲ではコーラス終わりでⅡ-Ⅴ-Ⅰと解決し、『はい、この曲わりました』という音楽的メッセージが発信されています。

アドリブはそれを土台として行います。

簡単に言うと、32小節なら32小節で一回きっちり曲が終わるということです。

音楽的に正しいのは?

さて、32小節のジャズスタンダードを弾くとき、1コーラスで一旦曲が終わるという段取りになっていることが分かりました。

では音楽的に正しくアドリブするにはどうすればいいのでしょうか?

もちろん1コーラスで一旦曲を終わらせて、次の頭からまた曲を開始するのが正しいと誰でも分かります。

だってそういう段取りの音楽なんですから。

だからジャズ初心者はその段取りに従ってアドリブを進めようと苦心します。

もちろん最初からはできません。

一生懸命練習し、なんとか1コーラスまとめられるようになり、そして次のコーラスから新たなアドリブを開始……という段取りに追いつけるようになりました。

しかし、それではジャズにならないんです。

 

 

「侵入」から見えてくる<逸脱>

ここで改めて「侵入」について考えてみましょう。

コーラスとコーラスの境目をまたぎ、曲の終わりと新たな始まりをわざと分からなくするという行為は、楽曲が用意した段取りを無視する行為であり、ルール違反です。

しかし、既にお伝えしている通り、「侵入」することでジャズ度が増してくれます。

なぜかというと、ジャズは<逸脱>する音楽だからです。

コーラスの段取りをきっちりと守るのではなく、そこから<逸脱>し、あえてルールを破ることでジャズがよりジャズらしくなってくれます。

じゃあそれをやればいいだけと思うかもしれませんが、これがそんなに簡単なことではないのです。

日本人とジャズ

日本人は、良くも悪くも規則を守る民族性を持っています。

内容に不満があってもとりあえずルールはルールとして守るというのが日本人の美徳であり、ほとんど本能といってもいい習性です。

そんな日本人がいきなり「はい、ルール破ってねw」と言われても、頭では理解できていてもいざアドリブの最中になると、どうしても1コーラスを締めてから次のコーラスという弾き方になってしまうのです。

そうやってコーラスを区切りことは、音楽的には正しいのですが、ジャズ的には正しくありません。

だからジャズにしようとして「侵入」を試みるのですが、それはそれで音楽的に間違ったことをするので、いざというときにどうしてもブレーキがかかってしまう……

これは日本人に対するジャズの公案といってもいいでしょう。

ジャズを演奏するためにはジャズという人間にならないといけない

確かタモリさんが「ジャズを演奏するためにはジャズという人間にならないといけない」とどこかで仰っていたように記憶しています。

最初はあんまりピンと来ていませんでしたが、今ではよく分かります。

今回の議題である「侵入」は、テクニックではありません。

勇気を持ってルールを破るという全人格的行為です。

しかもそれは、ある意味反道徳的行為です(もちろん音楽上のですが)。

だから、「侵入」を行う際は日本人ではできないのです。

その瞬間、我々はジャズ人にならないといけないのです。

これがジャズのアドリブの最難関のひとつであると僕は認識しています。

これに比べればテンションだのクロマチックだのといった記号の扱いは子供の遊びみたいなもんです。