先日ふと思い立って、以前から持論として述べている「声優の歌は抜けがいい」を改めて確認するために、サブスクで片っ端から声優の音源を聴いてみました。
その際、ミックスバランスをちゃんと確認するため、以前購入したSONYのMDR-M1STを使いました。
結論から言うと、思っていた以上でした。
もちろん歌手にもよるし同じ歌手でもミックスによっては「ん?」というのもありますが、声優さんの歌はかなりの確率で音源の中でいい存在感を放っています。
以下、具体例。
まず声優さんの歌(声)は輪郭がはっきりしています。
他の音との境界線がくっきりと”見える”のです。
比喩とか誇張ではなく、本当に見えます。
仮にその輪郭がエンジニアの腕だったとしたら、他の歌手も同じ輪郭を持っているはずですし、エンジニアが変われば輪郭が変わるはずですが、そうはなっていません。
かなりの高確率で声優歌手だけがその輪郭を持っています。
理由は以前から言っている通り、声を生業にしていること、マイクを熟知していることが挙げられます。
あと、もしかしたら声優特有の発声法なども声の輪郭を濃くする一助になっているのかもしれません。
とにかく声優さんの声だけ輪郭が全然違うんですよね。
声優さんの声は定位が前に出ます。
マイクを扱う技術なのか、それとも声優特有の意識(演技)がそうさせるのか、発声法が違うのか、具体的には分かりませんが、とにかく多くの声優歌手はそうなっています。
また、その定位がとてもナチュラルで加工した感じがしないので、おそらくミックスのテクニックではなく本人がそういう発声ができているのでしょう。
ギターでも定位を前に出すピッキングは可能なので(八幡式ピッキング:「ギタリスト身体論3」掲載)、当然声でもできるはずです。
声優歌手の声は輪郭がくっきりし、定位が前に出ているので、音量を下げ、音像を小さくしてもオケに埋もれません。
ですからモニターヘッドフォンで聴くと、びっくりするぐらい音像が小さいです。
例えるなら、オケの壁に囲まれた中に小さいボールみたいなのがある印象。
このボールがヴォーカルの声です。
逆に普通の歌手の場合はオケの壁全体とほぼ同じぐらいの巨大な物体が真ん中にデーンと聳えている感じ。
小さくすると埋もれるからそうするしかないのでしょう。
あまり知られていないというか、考えたこともない人が多いと思いますが、歌詞の理解度に比例して歌の質、それも物理的な性質は変わります。
歌詞の理解が薄い人は声の輪郭がぼやけ、定位もひっこみます。
逆に歌詞をしっかり理解した上で歌うと、声がくっきりし、定位が前に出てきます。
声優さんは物語上の様々な人物の心情を理解し、その人物になりきるのが仕事です。
だから歌詞の理解も一般的な歌手よりも深いところまで到達できる人が多いと思われます。
また、歌詞の主人公になりきる技術も圧倒的に高いと考えられます。
そうした技能が声優独特の抜ける声を作っているのではないでしょうか?
声優さんだったら誰でもいいっちゃいいんですが、僕が一番驚いたのは佐倉綾音さんです。
佐倉さんはいわゆる声優アーティストではないので歌手活動は基本していませんが、音源はいくつか出ています。
個人的にはラジオ番組「佐倉としたい大西」のテーマソング「Radiotime Predator」を訊いて、輪郭、定位、ミックスバランスの小ささ、それでもオケに埋もれないところに驚きました。
一緒に歌っている大西沙織さんの声もほぼ同じ性質を持っています。
このシングル、既に廃盤になっており、Apple Musicにもありません。
YOUTUBEで非公式音源があるので探してみてください(YOUTUBEの音質でどこまで伝わるかは分かりませんが)。
佐倉さんのソロ歌唱で現在入手できるのは「VOICE~声優たちが歌う松田聖子ソング~」がおすすめ。
佐倉さんは「制服」「薔薇のように咲いて、桜のように散って」を歌っています。
正直、こちらはコンプ感が強く、せっかくの声質の良さが存分に生かせていない気がします。
アルバムはこちら。
女性声優が歌うFemale Edition。
男性声優が歌うMale Edition。
音質は耳を刺すような痛さがあるので、僕はあんまり好きではありません。
ヴォーカル処理ももっとナチュラルにしても全然抜けると思うんですが……。
興味ある人は聴いてみましょう。
やっぱ声優さんの歌はいいです。
一通り聴いた後本業歌手の人の歌を聴くと、やたらでかいわ、輪郭がぼやけているわで萎えました。
もちろん声優をはるかに凌駕する歌手もいますが(アリアナ・グランデとか)。
これから歌手を目指す人は専業歌手よりも声優歌手を参考にした方がいいのかもしれません。