ジャズのアドリブで難しいのが、ジャズに聞こえない問題です。
コードトーンは捉えているし、Ⅱ-Ⅴも一応は弾ける、それなのに全然ジャズっぽくならない……。
こういった場合、多くはフレーズが小節にかっちりとハマりすぎています。
多少前後していてもせいぜい半拍前、半拍後ぐらいからはじめている程度でしょう。
そうなるといくら使っている音がジャズっぽくても、根本的にスクエアなのでジャズになりません。
そこで、小節をまたぐ、小節をはみ出すというテクニックが必要となってきます。
ただ、そこに新たな難問が立ちはだかってきます。
我々も熟知している通り、日本人は何につけてもきっちり・かっちりを好みます。
例えば図のように、それぞれの小節内でそれぞれのコードに見合ったフレーズをきっちりと弾ききりたくなってしまいます。
これは本能なのでもうどうしようもありません。
また、この捉え方自体は音楽のルールに沿っているので理屈の上では正しいことをしています。
一方、ジャズは逸脱の音楽なので、図のように指定された範囲をはみ出してそのコードを弾くことが要求されます。
(注:図ははみ出し方の一例)
こうすることで、フレーズはよりジャズらしくなってくれます。
ただしこちらは音楽のルールから逸脱しています。
ですからここに混乱が生じてきます。
小節をはみ出して弾くと、いくつかの問題が発生します。
まずは伴奏とのズレ。
例えばG7→C△7という流れがあるとします。
仮に一拍前からC△7を弾くとすると、G7の4拍目からC△7を弾くことになります。
コードはまだG7です(伴奏はG7を弾いている)が、自分だけ勝手にもうC△7に到達していることになります。
しかも、正しいC△7は自分より一拍遅れて始まります。
そのズレをしっかりと認識して弾き続けないと、簡単にロストしてしまいます。
上記のようにC△7に対して一拍早く入って、なおかつ次の小節の最後までC△7を弾ききるとすると、自分だけはC△7を5拍分弾いていることになります。
でも実際はC△7は4拍です(伴奏はそう弾く)。
基本的に、ジャズのアドリブでは常にこのズレを自ら起こしていきます。
僕はそれを<逸脱>と呼んでいます。
もう一つの問題は、ハーモニーのズレです。
C△7が半拍ズレるということは、G7の4拍目でC△7に解決しているということになります。
でも伴奏はまだG7を弾いているので、一瞬ハーモニーがズレることになります。
そのズレがジャズになっていくのですが、これも日本人の本来持っている感覚と違うので、かなり意識しないとできません。
無意識的にアドリブをすると、『この小節はG7だから最後までしっかりG7のフレーズを弾いて、次の小節に入ったらC△7に切り替わるからそこからC△7のフレーズを弾いて……』となり、いつまでもかっちりと小節にハマったアドリブから抜け出せなくなってしまいます。
そこで、強制的に全フレーズを4拍目から始めてみましょう。
ただし弾くフレーズは次の小節のコードを想定したフレーズです。
全ての小節が自分だけ一拍早く始まる、と考えても結構です。
これが全くできない、違和感がある、気持ち悪いという人はまだまだジャズじゃないと思って間違いありません。
しかし、4拍目からいつでも入れるようになると、これだけでかなりジャズ度は増してきます。
また、こうして音楽の基本的なルールや約束事を簡単に破れるようになってくると、人間がジャズになってきます。
一度試してみてください。