横浜ギター教室のレッスンでよく言うことですが、いいものを知るためにいいものだけに接していても意外とその良さが分かりません。
例えば、最初からいいステレオでしか音楽を聴いたことがない人は、その音の良さが分かっていません。
いいものは、悪いものと比較して本当にその良さが理解できるようになります。
「いいものを知りたければ一流に触れろ」とはよく言われますが、個人的には悪いものにもちゃんと触れておかないといいものの本当の良さが分からないと思います。
例えば、iphoneでしか音楽を聴いたことがない人がまともなオーディオで音楽を聴くと、あまりの違いに呆然とします。
それはオーディオの良さに対してではなく、iphoneと比べたときの音の振り幅(迫力、臨場感、解像度etc)に呆然としているのでしょう。
このように、悪い→良いという振り幅を持たせるといいものがちゃんと理解できるようになります。
昔は世に出てくるものは一定以上のいいものしかありませんでした。
しかし今は誰でもどんなものでも世に出すことができます。
音楽、ダンス、漫画、イラストなどなど。
それらの悪い例をあえて知っておくことも大事だったりします。
ただし馬鹿にするのではなく、ちゃんと何が悪いのか、プロとどこが違うのかを研究する必要がありますが。
「悪いところを探しても仕方ない、いいところを見つけよう!」という考え方もあります。
それはそれで正しいのですが、悪いところを探すこと自体が悪ではありません。
そこから何かを学ぶことができれば悪いところを探す価値は十分あります。
大きな話でいうと、歴史上の極悪人や悪行、悪政をスルーしてしまうと、また同じ過ちが繰り返される可能性があります。
だからそれらを明らかにし、研究する必要があるのです。
まあそこまで壮大な話ではないのですが、クリエイターを目指す人は、いいものと同じくらい悪いものにも触れておくべきだというのが僕の持論です。
いいものから何かを学ぶのは簡単です。
いいものに触れれば人は感動するし、尊敬するし、その秘密を知りたいという情熱が生まれます。
しかし、悪いものに触れると、見下し、マウントを取っていい気になったり、それよりもちょっとだけましな自分に安心してしまいます。
だからそれの何が悪いのか、どこを改善すればいいのか、いいものと何が違うのかを見落としてしまいます。
悪いものから何かを学ぶときは、感情を落ち着けて、冷静に判断する必要があります。
また、それを無闇に口外しない(特にSNSで)という忍耐も必要となります。
そうして悪いものからも学べるようになると、自分の認識に振り幅が出来てきます。