同弦上で次のようなフレーズを弾くとします。
なんでもないフレーズで、誰でも弾けるようなものですが、それだけについ力みながら弾いてしまったり(力みながらでも弾けるから)、合理性を目指して非合理的な弾き方になってしまうことがあります。
今回はそれらをご紹介します。
フィンガリングを見つめ直すきっかけとしてください。
横浜ギター教室で戒めているのが、最初から指を配置するフィンガリングです。
上記フレーズでは1弦の4F、5F、7Fを弾きます。
だから、最初から写真ようにそれぞれのフレットに指を配置しておけば合理的ではないかという考え方です。
確かに、こうやって今から弾くフレットの真上に指を配置しておけば、指とフレットの距離が縮まるので一見合理的に見えます。
また、多くの教則本でも推奨されているので、これが合理的なフィンガリングだと信じている人も多いでしょう。
僕にはこれが合理的なフィンガリングだとは思えません。
確かに弦と指の距離は縮まりますが、こうすることでもう既に前腕が力んでいます。
それでもゆっくりなら問題なく弾けますが、テンポが上がってきたり、この前後に弾くフレーズが複雑だったりポジション移動が激しいものだと恐らく弾けなくなってくるでしょう。
仮に問題なかったとしても、若いからどうにかなっているというケースもあります。
ですから、最初から指を配置してフィンガリングするのはやめましょう。
指を開いて配置するとなんか力む、疲れるということに気づいた人は、ある程度脱力を模索したフィンガリングを行っていると思います。
ただし、比較的脱力ができていても結果的に力んでしまう弾き方があります。
それが手首でのフレット移動です。
ニュートラル
まだどこも押さえていない状態。
上記の”配置するフィンガリング”よりも脱力しているのがわかると思います。
現時点では人差し指が4Fに届いていません。
また、中指も5Fのフレット真上にあります。
ここからさらに指や手を動かして各フレットを押さえて行く必要があります。
この時点で非合理的だと判断する人がいるようですが、それは表面しか見えていない証拠です。
現時点で脱力できているので、運動としてはまだ合理的です。
ただし、ここからの手の動かし方に問題が潜んでいます。
4F
まず4Fを弾きます。
今手をどう使っているかというと、指をがばっと開くのではなく、指は脱力したまま手首を親指側に曲げています。
そのせいで中指~小指が弦から浮き上がっています。
ここが問題なのです。
手首を使うことで前腕の脱力をある程度キープできてはいますが、そのせいで指と弦の距離が一気に変わってしまっています。
また、手首を曲げることで前腕が力みます。
せっかく最初に弦との距離感を整え、前腕も脱力できていたのに、ここでそれらが一発で狂ってしまいました。
5F
手首をやや真っ直ぐに戻していくと、中指がちょうど5Fのあたりに来ます。
ここで一度ニュートラルな位置に戻ってきます。
弦との距離感は各指が均一に戻りましたが、前腕は恐らく力んだままでしょう。
7F
今度は手首を小指側に曲げます。
すると小指が7Fに届きます。
しかし、他の指は弦から離れているのが分かります。
また手首を使っているので前腕は力んでいます。
このフレーズを1回だけ、ゆっくりのテンポで弾くのならこれでもいいでしょう。
しかし、連続したり、テンポが上がってくるとだんだんしんどくなってくるはずです。
また、手首はそんなに左右に動くものではありません。
無理して左右に動かしていると腱鞘炎になる可能性もあります。
じゃあどうやって弾くのが合理的かというと、腕全体を左右に動かせばいいのです。
そうすれば弦と指の距離も常に一定で、前腕も脱力したままフィンガリングできます。
ちなみに、写真も撮ってみたんですが、余計分かり辛いので掲載は断念しました。
やってみると違いはすぐに体感できるんですが。
正しいフィンガリングは、習得するためには何度も細かくチェックして修正していく必要があります。
経験上、フィンガリングの基礎を学び、ある程度応用できるようになるまで最低1年かかります。
動き自体はシンプルなので5分程度で理解できます。
その動きの習得に1年かかるのではなく、それを邪魔する癖を理解し、取り除いていくのに最低1年ということです。
修正修正また修正という地味な作業ですが、やったらやっただけ成果が出るので、生徒さんは皆さん熱心に取り組んでくれます。
とりあえず本記事では悪い例だけ覚えてください。
それらを悪いことだと認識すれば、正しい動きは徐々に見えてくると思います。