音楽を演奏する上での3つの段階をご説明します。
何らかの楽曲があって、それを最後までちゃんと弾けるかどうか。
また、タイムをキープできるか。
この段階は練習すれば誰でも(この段階の範囲内で)上にいけます。
といってもかなりの努力や忍耐、あとお金もそれなりにかかるので、耐えられずに脱落する人も大勢います。
この段階はアマチュアレベルです。
ここから一気に話がややこしくなってきます。
例えばジミ・ヘンドリックスのLittle Wingという曲を演奏するとします。
それがただフレーズやコードを弾けているだけなのか、それともちゃんとLittle Wingになっているのか、という問題です。
堅い言い方をすると「楽曲の解釈」です。
まず、当たり前ですが弾いているジミヘン本人の演奏はLittle Wingになっています。
わかりやすい例だと、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの演奏もLittle Wingになっています。
でも中には「ん?」と感じる演奏もあり、それはまだその演奏が音楽になっていないということです。
弾けてるけど何か違う、上手いけど感動しない……。
ではそれを音楽にするためにはどうしたらいいか?
芸術に対する認識を高めるしかありません。
Little Wingという楽曲を聴いて何を感じるのか?
その感じたものをどう楽器からアウトプットすべきか?
原曲に忠実であるべきか、それとも壊すべきか?
また、オリジナル曲であってもまだ本人がその曲のことを分かっていない、掘り下げられていないというケースもあります。
それらは物理的概念や音楽の知識、身体操作などでは対応しきれません。
その人本人がどれだけ芸術に対して深みを持っているのかということです。
音楽から物理的要素以外の何かを感じられる人は、訓練すればこの段階までは来られます。
よく「音楽は人だ」みたいなことが言われますが、それはこの段階での音楽的成長の話をしているのでしょう。
この第2段階に来られたら、恐らくプロにはなれます。
最後に、技術も十分あり、音楽への深い理解もあってさらにそれをアウトプットできたとしても、いざステージで弾いたときにかっこいいかどうかという問題があります。
めちゃくちゃ上手いし演奏も深みを感じるけど、ステージを見ているとなんか遠い、キラキラしてない、冷めてくるというプレイヤーがいます。
一方で、技術はまだ全然、中身も薄っぺらい、でもステージで抜群に華がある、キラキラしている、観ていると何か熱いものがこみ上げてくる……というプレイヤーもいます。
華があれば恐らくスターになれます。
しかし華があるかどうかはもう天性の資質でしかないので、勉強とか努力とかはたぶん無意味です。
とはいえ、音楽はスターにならないと成立しないというわけではありません。
自分に華がないことが分かっていればさっさと音楽の世界で別の道を探せばいいだけです。
僕もそのタイプで、割と早くからステージではやっていけないなと分かっていたので、別の道を模索してきました。
その結果、まあまあ上手くやれています。
まとめると、第1段階を努力で上がりきり、第2段階であれこれともがき、自分が第3段階でやっていける人間なのかを見極めてから自分のポジションを再考すると、たぶん音楽でやっていけます。
第2段階(演奏が音楽になっているか、音楽の中身の違いが分かるか)が全く理解できない人は、残念ながら音楽は向いていません。
でも、第1段階も第2段階もぜんぜんわかんねーけどステージに立ったらめっちゃキラキラしているという人もいます。
ここが音楽の面白いところでもあり、むかつくところでもあります。