横浜ギター教室にジャズを習いに来る人は、だいたい二種類に分かれます。
まったく分からないから教えて欲しいという人と、自分を変えたいという人。
前者は初心者、後者は中級者~上級者です。
いずれにしても僕は同じことを教えます。
ひとつのフレーズを使い続けるというコンセプトです。
初心者でも中級者でも上級者でも、ここをしっかりと守ることでアドリブに説得力が出てき、会話になっていきます。
初心者の方はやればやるほどこれが身についていきます。
しかし、中~上級者の方はなかなか進みません。
なぜかというと、それまでの自分を捨てないといけないからです。
アドリブが出来る人は、概ね『たくさんのフレーズを覚えてどんどん投入していこう』というコンセプトで学んできています。
その結果、自分のソロに中身がないことに気づき、悩んで、打開策を探ります。
中身がない=フレーズが少ない、フレーズのクオリティが低いと考え、もっとフレーズを増やしていこうとするとさらに泥沼に浸かっていきます。
逆に、一つのフレーズに責任を持ち、それをきちんと使いこなせるようになると、アドリブに説得力が出てきます。
ただ、一度数の論理で自分を形成した後にその支柱とも言えるフレーズの数を減らすことはかなりの精神的な負担になります。
もっといっぱい弾かないといけないのでは?
こんなシンプルなことをしていて馬鹿にされないだろうか?
サボっているように見えないだろうか?
……
数を減らすという技術的には簡単なことが容易に出来ないのは、ジャズの初期訓練においてすり込まれた偏った価値観のせいでしょう(この価値観の根源はコルトレーンです)。
せっかく自分で自分に疑問を持ち、もう一人前になっているにも関わらず教室に足を運んでまで自分を変えようとしているのに、結局最後の最後で元の自分を選んでしまうというのはなかなか切ない出来事です。
それは講師であるお前の力不足だろうと思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。
なぜなら、僕のアドリブコンセプトをジャズ初心者の人はスラスラと身につけていくからです(教える内容は全く同じ)。
最近では中~上級者の方が丁寧に説明しているぐらいです。
それでもどうしても数の論理(沢山のフレーズを次々投入し、アドリブしていく)から抜けられない中~上級者がほとんどなのが現状です。
これは僕のジャズレッスンにおける今後の課題でもあります。
そういえば黒人音楽には一度獲得したものを捨てて生まれ変わるといった伝説が結構ありますね。
ロバート・ジョンソン、ソニー・ロリンズ、マイルス・デイビスなどが有名です。
そういう精神文化を内包しているのでしょうか?
そこまでの偉人ではなくても、ジャズである程度仕事が出来ている人なら、一度や二度は自分を捨てて生まれ変わった体験が必ずあるはずです。
もちろん僕もあります。