ジャズのアドリブでぜひできるようになりたいのが、コーラスをフレーズでまたぐことです。
僕はこれを「侵入」と呼んでいます。
1コーラス目をきっちり締めて、次のコーラスの頭から律儀にまた始めるのではなく、前のコーラスの終わりからフレーズがはじまり、そのまま次のコーラス頭に「侵入」する。
これをすることでジャズ度がぐんと上昇し、さらに自分のアドリブやアンサンブルを刺激することができます。
ではまず「侵入」のイメージを見てみましょう。
1、「侵入」していない
真ん中の二本線を境に左が1コーラス目、右が2コーラス目。
そこにフレーズをどう配置するかというイメージです。
1はフレーズが2コーラス目の頭から始まっているので「侵入」はしていません。
もちろんこれを絶対やってはいけないわけではありませんが、かなり堅実なフレージングとなります。
その分アドリブが固くなります。
毎コーラス毎コーラス頭から始まっていると、なんとなく物足りない、ジャズっぽさがどこか足りないソロになってしまいます。
まあ、巨人でそういう人もいますが…
2、軽い「侵入」
1コーラス目のラストのどこかからフレーズがはじまり、2コーラス目の頭で着地(解決)するタイプ。
こちらは軽く「侵入」しています。
1コーラス目最終小節にⅡ-Ⅴを設定すればだいたいこういうフレージングになると思います。
ただ、この場合「侵入」感はそこまで強くはありません。
できるようにはなっておきたいけど、これをゴールとするともったいないです。
3、がっつり「侵入」
1コーラス目から2コーラス目にしっかりとフレーズで侵入している状態。
コーラスの切れ目が崩れるので、ジャズ的な崩しや<逸脱>感がしっかり出てくれます。
これを使いこなせるようになるとジャズ感がぐんと増してくれます。
じゃあその「侵入」って実際どうやるの?
誰がどこでやってるの?
改めていろんな音源で調べてみると、誰にでも分かりやすいものがいくつかあったのでご紹介します。
Johnny Smith「Gypsy in My Soul」00:30~
この場合はテーマからソロに「侵入」しています。
テーマの終わりに2小節ブレイクがあり、そこからソロに入ります。
ジョニーは頭の7拍前からスケールの上昇を始めます。
普通ならソロの頭で着地して一旦フレーズを切る(上記イメージ2)んですが、彼はそのままスケール上昇をやめずにソロに「侵入」しています。
僕が知る限り最も分かりやすい「侵入」例です。
Grant Green Complete Quartets With Sonny Clark「I Ain't Neccessarily So」5:00~
グラント・グリーンのソロのだいぶ後半、コーラスまたぎの瞬間は5:00ぐらいからですが、その少し前4:56あたりから始めたフレーズをそのまま使って次のコーラスに「侵入」しています。
フレーズがシンプルなので真似しやすいと思います。
John Coltrane「BLUE TRAIN」コルトレーンのソロ全コーラス
最後にもうひとつ。
コルトレーンはなんとBlue Trainのソロの全コーラスで「侵入」しています。
一度もコーラス頭から入っていません。
この「侵入」は、ジャズレッスンではわりと早めに教えます。
これができるとジャズ度が上がるからです。
ただ、きちんと「侵入」するのは初心者はもちろん、上級者でもかなり難しいです。
なぜならジャズと日本人は文化的距離が遠いからです。
長くなりそうなので次回そこらへんをご説明します。
続きはこちら。