前回の記事でジャズの楽曲のおおまかな仕組みが分かっていただけたと思います。
では今回はジャズにおける最も重要なパート、「アドリブ」についてご説明します。
アドリブとは、簡単に言えばあるテーマについてジャズ語でスピーチする時間です。
例えば、日本文化について英語でスピーチするようなものです。
ここにその人の考え方や熱量、人間性などが反映されます。
今まで誰も聞いたことがないような斬新な切り口を持つ人、誰もが心を奪われてしまうような熱量を持った人、誰もが深く納得できる論理性を持った人、人間的な暖かみを持った人、一見キ○ガイにしか見えない人……様々な人がジャズ語で自己主張をするのがジャズのアドリブです。
ではその「ジャズ語」を理解できなければジャズは楽しめないのかというと、これはイエスでもありノーでもあります。
ジャズプレイヤーを目指す人なら、ジャズ語の正しい発音や文法を理解していかないとダメでしょう。
しかし、ジャズを聴いて楽しみたいだけの人は、そこまで正確に理解できなくても大丈夫です。
実はジャズ語のスピーチ(アドリブ)にはひとつ、確固たる評価基準があります。
それは本ブログの読者にはおなじみ、<逸脱>と<回復>です。
ジャズというアフロアメリカン文化では、理路整然として礼儀正しい上品なスピーチ(アドリブ)よりも、ジョークや余計な話をまじえて本筋から<逸脱>し「何言ってんだこいつ?」と思ってたらいつの間にか元に戻っていたという方に高評価が下されます。
この評価基準を知っておかなければジャズはいつまでたってもよくわからない音楽で終わってしまいますし、日本人が持つ正確さへの信仰やルールの尊重、技術礼賛などでジャズを評価してしまうことで、本当に価値のあるプレイヤーや演奏をスルーしてしまいかねません(実際にそういう人や事例は沢山あります)。
なので、ジャズのアドリブを聴くときはどこが<逸脱>しているのか、どうやってそこから<回復>しているのかを注意して聴いてみましょう。
ざっくり言うと、「これって間違えたの?」とか「下手なんじゃないの?」と違和感を感じてしまうものが<逸脱>している演奏です。
そういった演奏はそもそも日本人には聴くのもやるのも不向きなのですが、ポイントがわかってくると面白くなってきます。
<逸脱>の実例などはまたいずれ詳しく解説してみます。