ギターをある程度やっている人は「インサイド・アウトサイド」という言葉を聞いたことがあると思います。
これは、例えば1弦→2弦とピッキングする際、弦と弦の内側をピッキングするのか、外側をピッキングするのかということです。
確かに、外側をピッキングするより内側をピッキングする方が距離が近いということは誰でも分かります。
だから、できるだけ近い距離であるインサイドを選択した方が合理的なピッキングができ、タイムの遅れを回避したり、速弾きを可能にするというのが一般説だと思われます。
一見正論のように思えますが、ここの重大な落とし穴があるのにお気づきでしょうか?
そもそもインサイド云々というのは「弦と弦の距離が近い」という話でしかなく、それらをどうピッキングするかという要素が抜け落ちています。
仮にインサイドを選択したとします。
そのとき、下図①のように大きく振りかぶるようにピッキングしたとしたらどうでしょう?
当然距離は長くなり、その分次にピッキングする弦から離れてしまい、せっかくのインサイドが無意味となってしまいます。
従って、②のようにピッキングをできるだけコンパクトにする必要があります。
こうすることによって、インサイドによる弦と弦の近さに加えて、ピッキングの距離の短さが功を奏し、弦移動を素早く的確に行うことができるようになるのです。
つまり、重要なのはインサイドかアウトサイドかだけではなく、それをどうピッキングするかなのです。
そのために「ピッキングライン」という概念が必要となってきます。
「ピッキングライン」とは僕の造語で、ピッキング研究の過程で発見したものです。
具体的には、ピッキングをする際にピックが描く立体的な軌跡とその距離のことです。
今回は距離に絞ってお話します。
上手①はラインが膨らみ、余計な距離が生まれてしまっている状態。
②はラインをコンパクトにまとめ、余計な距離を殺している状態。
原則としてピッキングは②を目指します。
ただし、ギターの演奏は単なる運動ではなく音楽としての表現にも関わってくるので、どうしても大きく振りかぶる必要があれば別ですが。
この「ピッキングライン」に関しては拙著「ギタリスト身体論3」に詳しく記載してあります。
下記リンクからどうぞ。
さて、改めてインサイド・アウトサイドを考えてみましょう。
インサイドを選択したからピッキングが合理的になったはずなのに、なぜかまだタイムが遅れる、ピッキングが楽になった気がしないという方は、恐らくラインが膨らんでいます。
ですので、まず自分がどれだけの距離ピッキングしているかを観察しましょう。
そして、その距離をコンパクトにできたとき、凹と凸がガチッとはまるように、インサイドピッキングが機能するようになるはずです。
ただ実際はピックの持ち方、腕の振り、軌道、ピックをどう弦に当てるか、弦を弾かずにどう越えるかなどなど様々な問題が絡み合ってくるので、距離を縮めただけで全てがうまくいくとは限りません。
細かいことは「ギタリスト身体論3」をお読みいただくか、教室までお越し下さい。