ギターのピッキングで、よく手首について言及されます。
手首を柔らかく、手首を脱力して、手首のスナップ云々……
僕もかなり最近までそう信じていましたが、本腰を入れてピッキングの研究を5年ほど行った結果、正反対の結論に達しました。
詳しくは「ギタリスト身体論3」に記載する予定なので、ここでは簡単にご説明します。
結論から言うと、手首を使うとピッキングにムラが生じやすくなります。
なぜかというと、手首はあらゆる方向に動きすぎるからです。
弦に対して垂直にも平行にも、斜めにも動かせます。
それを整え、一定のラインでピッキングするためには、かなりの時間訓練する必要があります。
長時間やって整ってきた人はまだいい方で、それでも混乱したままの人も大勢います。
その最たるものは、アップピッキングで弦に引っかかるという現象。
これは手首でピッキングしている証拠、ピッキングラインが合理的でない証拠です。
僕が考案したピッキングフォームは、それを矯正していくためのプログラムでもあります(もちろん他にも効果はたくさんあります)。
僕のピッキングフォームは、動きの自由度を制限していきます。
そうすると最初は窮屈に感じますが、その分ピッキングラインが限定されるので、今自分が弦に対してどういうラインでピッキングしているか、今ピックがどこにあるかが把握しやすくなります。
その結果、ピッキングをコントロールしやすくなります。
詳しくは本に書いてあるので、ここではまだ言えませんが、前腕の回転を使い、親指をある状態にキープします。
そうすることでピッキングラインがはっきりと見えるようになります。
ギタリストはとかく「自由」が好きです。
ピッキングフォーム?そんなの自由だろ?型にはめたフォームで弾いてもロックにならねーよ!……と考える人は今でも多いでしょう。
まあ、ロックと共に成長した楽器なのでそこはしょうがないのかもしれませんが、「自由」をコントロールするのが難しいことは、社会でもギターの奏法でも同じです。
手首を使うことで縦横無尽にピッキングできますが、その自由をしっかりコントロールできなければ満足に演奏できません。
一方、不自由さは気分を害し、時として人の尊厳に侵入してきますが、正しい規制により良い結果が生まれるのであれば、それはいいものだと言えるでしょう。
僕のピッキングは正しい規制として、手首を使わないことを選択しています。
もちろんそのフォームで効果が得られることは実証済みです。
気になる人は手首について再考してみましょう。
詳しくは「ギタリスト身体論3」をお待ち下さい。
追記:刊行されました。