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Complicated/アヴリル・ラヴィーン 歌詞解説(原文/和訳)


八幡謙介ギター教室in横浜

Avril Lavigne

1984年、カナダ生まれ。

2002年に17歳ファーストアルバム「Let Go」でデビューし、世界的なアーティストとなる。

https://www.sonymusic.co.jp/artist/avrillavigne/ Copyright 2021 Sony Music Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved. Copyright 2021 Sony Music Marketing United Inc. All rights reserved.

アヴリル・ラヴィーン - Wikipedia 

Complicated 公式動画

www.youtube.com

THE FIRST TAKE

www.youtube.com

主題

本作の主題は<社会と個>です。

社会に飲み込まれてしまった友達、まだそれに抗っている自分、でも自分もいずれは……というお話。

社会に出る直前の、モラトリアム期のハイティーンが必ず直面する問題です。

その主題の中で「complicated」という単語がキーワードとなっています。

歌詞の特徴

本作の特徴は、韻にあります。

ラップでもないのにかなり意識してしっかりと韻を踏んでいることが分かります。

韻にあたる部分にアンダーラインを引いてあるのでチェックしてみてください。

また、本作の歌詞ではある文節をあえて繰り返さず前後にかけたり、セクションの最後にくる言葉が次のセクションにかかっていたりと複雑な構造が見られます。

それらについても解説しています。

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Aメロ

Chill out, what ya yellin' for?

落ち着いて、何を叫んでいるの?

Lay back, it's all been done before

リラックスして、そんなこともう何度もやってきたでしょ?

 

主人公が誰かをなだめています。

相手は友達です(後に分かる)。

【it's all been done before】がちょっと分かり辛いですが、これは自分(達)がやってきたくだらないことに対して使う慣用句です。

例えば友達がやんちゃをして、「いつまでそんなことやってんの?もう十分やってきたでしょ?」みたいな感じ。

 

And if, you could only let it be, you will see

(そんなこと)放っておけば分かるよ

 

主人公は興奮している友達をなだめています。

怒りや憤り、衝動などは放っておけばそれが何なのか君にも分かるよ……と。

ここでちょっとだけキャラクターや関係性が見えてきました。

主人公の方が相手よりもやや大人びているようです。

実際に年齢が上なのか、それとも精神的なものなのか。

あと、こういった説教じみたことをちゃんと言える関係性のようです。

 

I like you the way you are

あなたのあなたらしいところが好き

When we're driving in your car

(例えば)一緒にドライブしているときとか

 

【like】なので、かなり軽い感じの「好き」ですね。

日常的に、関係性の浅い人にでも使う表現です。

「車」については恐らく【are】と【car】で韻を踏むために出してきただけで、深い意味やメタファーはないでしょう。

ここで『アメリカの車社会が云々』とか考えるのは深読みしすぎです。

 

And you're talking to me one on one, but you become

あなたは私と一対一で話してくれた、でも…

 

主人公は友達のことがとても好きなようです。

荒れているところをなだめ、ちゃんと好意を伝え、褒めているところからそれが伝わってきます。

しかし、【but you become】で何やらそこに不穏な空気が流れてきます。

これはBメロへの予告ですね。

歌詞としてはちょっと珍しいパターンです。

 

ちなみにこのAメロは回想になります。

Bメロが現在です。

 

Bメロ

(but you become)Somebody else 'Round everyone else

でもあなたは周りのみんなと一緒になってしまった

You're watching your back Like you can't relax

いつも警戒して落ち着きがなくなった

 

大好きだった友達が変わってしまいました。

恐らく友達は個性を大事にしていたのでしょうが、今では周りと同じ無個性な人間になってしまったようです。

就職してすっかり社会人っぽくなってしまったと考えるのが自然でしょう。

次がちょっと難しいのですが、まず【Watch your back】は「気を付けろ」「警戒しろ」といった意味です。

恐らく友達は社会人としての保身ばかり考えるようになってしまったのではないかと思われます。

【relax】はやや強引ですが【back】との韻なのであんまり深い意味はなさそうです。

ただ、Aメロの【Chill out】や【lay back】ともかけているところはさすがです。

主人公は一環して「落ち着いて」「リラックスして」と言い続けているのに、友達は以前は若さ故に、今は大人であるが故にそれができなくなっています。

 

You try to be cool 

あなたはクールであろうとしている

You look like a fool to me

(そんな)あなたが私には愚かに見える

Tell me

教えて

 

大人になり、保身にいそしむ友達はまだ主人公の前でクールであることを装っているようです。

10代の頃はやんちゃして大人を馬鹿にしたり否定したりしていたくせに、いざ自分が社会人になったら今度は社会人である自分が格好いいと言い出すやつ、いますよね?

そんな友達の様子を主人公は「愚かに見える」とバッサリ。

この【fool】は【cool】との韻です。

 

友達は(たぶん就職して)すっかり変わってしまいました。

その友達を「変わった」と嘆いているということは、主人公はまだ気持ちはハイティーンのまま、恐らく夢を追いかけているのでしょう。

ここで、<夢と現実>という本作の主題が見えてきました。

大人になっても夢を追いかけている主人公と、諦めて進学や就職を選んだ友達……やや使い古され構図ですが、既視感は誰にでもあるでしょう。

おそらくアヴリルもそういった境遇にあったのだと思われます。

 

Bメロも【tell me】という呼びかけで終わっており、次の展開を示唆しています。

ドラマの「引き」のような歌詞の構造が秀逸です。

 

サビ

Why'd you have to go and make things so complicated?

どうして物事をそんなに複雑にしないといけないの?

I see the way you're acting like you're somebody else Gets me frustrated

あなたが他の誰かを演じているのを見ると私は憤りを感じる

Life's like this, you

 

ここでタイトルの【complicated】(複雑)が出てきます。

「複雑」なのは友達、ということは主人公自身は「シンプル」であるとうかがえます。

主人公からすると、自分じゃない誰かを演じたり、それをクールに見せようとする友達は、人生や自分自身を「複雑」にしており、それに対して疑問や憤りを感じています。

さらに行間からは主人公の「寂しさ」が伝わってきます。

恐らく主人公と友達は一緒に大人に反抗し、夢などを語り合っていたのでしょうが、友達の方がいち早く社会に取り込まれてしまい、裏切られたような、置いていかれたような気持ちになっているのでしょう。

それは「シンプル」に夢を追い続けている自分自身への懐疑や不安につながります。

主人公の「憤り」は、自分の「シンプル」さを疑うことへの不安を払拭するためのある種のポーズとも取れます。

そう考えるとこの主人公もまた別の意味で【complicated】(複雑)だと言えるでしょう。

 

【Life's like this, you】については、この曲のキャッチフレーズのようなものと捉えておけばいいと思います。

特に意味があるとは思えません。

 

And you fall, and you crawl, and you break And you take what you get, and you turn it into Honesty

落ちて、這いつくばって、壊れて、何かを掴んで、それを誠実さに変えていく

and promise me I'm never gonna find you faking

私が二度とあなたがフェイクしてるところを見ないと誓って

No, no, no

 

主人公は友達の軽薄さや中身のなさを見抜いており、もっとしんどい経験をして誠実な人間になれと檄を飛ばします。

……ちょっと説教臭いですね。

【and promise me I'm never gonna find you faking】については直訳すると上記のようになりますが、やや意訳すると「二度と私の前でフェイクしないで」ということです。

ここへ来て分かるのは、主人公はまだこの友達が大好きだということです。

ただ、今の状態はどうしても受け入れ難いので、どちらかというと元の人間、昔の自分が好きだった状態に戻って欲しいと願っているようです。

果たしてそれは可能なのか……

 

最後の【No, no, no】は特に意味はありません。

 

A'

You come over unannounced

あなたは突然やってきた

Dressed up like you're somethin' else

自分が”何者か”であるように着飾って

Where you are and where it's at you see

あなたのいるポジションも、あなたの視点も

You're making me(Laugh out)

あなたは私を嗤わせる

 

さらに時が進んだようです。

「突然やってきた」とあるので、恐らく主人公と友達はしばらく疎遠になっていたのでしょう。

そこへ突然、Bメロの時期よりもさらに着飾った友達が現れます。

【Where you are and where it's at you see】の訳が正直かなり難しかったんですが、【Where you are】は「あなたがいるところ」つまり社会的ポジションと考えられます。

【where it's at you see】は「視点」でしょう。

主人公は久々に会った友達がかつての”フェイク”からすっかり”何者か”(でも自分自身んではない)になってしまい、その立場やそこからの視点(ポジショントーク)でしか話さなくなったことを嘲笑します。

かつて語り合った夢や反抗はもう完全にどこかへ消えてしまったのでしょう。

 

次の【You're making me Laugh out】は、【Where you are and where it's at you see】と、その次の【when you strike your pose】の両方にかかっていると思います。

つまり、

 

Where you are and where it's at you see making me Laugh out

あなたの居場所や視点は私を嗤わせる

when you strike your pose, You're making me Laugh out

あなたのポーズは、私を嗤わせる

 

というのをつづめているのでしょう。

でないとちょっと意味が分からなくなってきます。

かなりややこしい省略の仕方ですが、実は意味があります。

それについては後にご説明します。

 

(You're making me)Laugh out when you strike your pose

あなたのポーズは私を嗤わせる

Take off all your preppy clothes

(お願いだから)プレッピーな洋服を脱いで

You know you're not fooling anyone When you become(Somebody else)

他の誰かになったところであなたは誰も騙せない

 

【strike your pose】は「ポーズを決める」ということでしょうが、この場合は恐らく「社会的な地位を演出する」という意味だと思われます。

友達はきっと「俺はもうこんな地位になったんだぜ」と自慢してきたのでしょう。

 

「プレッピー」は日本だとファッションのジャンルとして認識されていますがが、英語だと「お坊ちゃん服」とか「キレイ目な洋服」といった、スタイルを皮肉っているニュアンスが強いと感じます。

MVを観るとストリートファッションに身を包んだアヴリルと仲間がモールで悪さをするところが描写されているので、元々はそういった安くて小汚いファッションをしていたのでしょう。

それがすっかりお坊ちゃんみたいな大人しい服装になってしまい、見ているだけで気恥ずかしくなって「お願いだからその服脱いで!」と主人公は懇願します。

 

最後のラインもどうやら【Somebody else】が前後にかかっているようです。

本来は、

 

You know you're not fooling anyone When you become Somebody else

Somebody else 'Round everyone else

 

となるはずです。

 

【fooling】は「騙す」。

「そんなお坊ちゃん服を着て誰かになったになったつもりでも、あなたは誰も騙せない」と言いたいのでしょう。

心情的には「自分は騙されない」と言っている感じがします。

 

続くB'とサビは同じ内容。

complicatedとは

ではあらためて本作のタイトルであるcomplicatedが、作中どういう意味を持つのかを考えてみましょう。

原文を読むと、【complicated】には表/裏の意味と、さらに隠されたギミックがあると分かります。

 

表の意味

主人公が自分を見失っていく友達に対し「なんでそこまで物事を複雑にするの?」と憤る様子。

これをそのまま捉えると「人生はシンプルだ、自分自身であれ、やりたいことをやれ」というメッセージになります。

ポップ/ロックソングの主題としてはこれだけでも十分ですが、しっかり歌詞を読み込むともう少し奥があることに気づきます。

 

裏の意味

主人公は複雑さに疑問を抱き、憤ってはいますが、同時に自分のシンプルさや一貫性に対しどう考えても不安を抱いていると感じられます。

友達とは最後まで縁を切らないし、「自分はそうはならない」と宣言もしません。

自分自身の明るい未来も描けず、友達への心配と説教ばかり……

自分は自分、自分だけは絶対に流されない、夢は諦めない……そう思いつつも内心はいつか自分も社会に呑まれ、夢を諦め、プレッピーな格好をした”フェイク”になってしまうのではないか?いっそその方が楽なのでは?そうした不安や葛藤を抱えていると感じられます。

そう、「複雑さ」を非難する主人公の方が実はもっと【complicated】な存在なんです。

そこに気づくと、本作にじんわりと文学性が出てきます。

まあ文学としてはまだまだぬるいと言えますが、17歳(当時)の女の子が歌うポップ/ロックソングとしては十分深みがあるでしょう。

 

文章構成

本作の原文を読むと、文章構成が非常にややこしいことに気づきます。

ネットでもこの歌詞が分からないという意見が散見されます。

最初は語呂合わせや楽曲との兼ね合いで仕方なくそうしているのかと思っていたのですが、ふとあることに気が付き背筋がゾワっとしました。

恐らくこの歌詞の文章構成は、タイトルにちなんだ形であえて複雑(complicated)にしたのでしょう。

普通、ポップ/ロックソングは徹底的にキャッチーに仕上げていきますからね。

この原文の分かりにくさはタイトルにちなんでいるとしか考えられません。

まあさすがに16歳のアヴリルがそこまで考えて書いたとは思えないので、バックにいるブレーンがそうしたのでしょう。

それにしても、「Complicated」という世界観を表現するのにそこまでやるか……と、脱帽です。

Z世代には通じるのか?

最後に疑問です。

果たしてこの歌詞、Z世代に通じるのでしょうか?

この曲を取り上げようと思ったきっかけは、きっと今の若い子にも共感できるはず!と思ったからなのですが、翻訳してみると正直なんか違う気がしてきました。

そもそもZ世代って夢を追い求めている人が少ない気がするし、「なんでそんな複雑に考えるの?」と言われても「は?複雑で何がダメなの?」と言い返されそうです。

あと、この説教口調もZ世代にはもう響かない気がします。

Z世代の皆さん、どうでしょう?

まあ歌詞はピンと来なくても名曲なので、知らなかった方はぜひ聴き込んで欲しいです。

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