ギターの基本テクニックに「スライド」があります。
ある音を弾く際、押さえるフレットの下あるいは上から指をスライドさせてアプローチするものです。
地味なテクニックですが、これをしっかりと身につけるとメロディやソロの表現が確実に豊かになります。
そもそもなんのためにわざわざスライドをして弾くのでしょうか?
ひとつはハンマリングやプリングのようにレガートするためでしょう。
そうすることで表現が柔らかくなり、フレーズに表情がついていきます。
あと個人的には、スライドというのはそれ自体が表現であると思っています。
チョーキングが単なる音程移動の手法ではなく、それ自体がひとつの表現であるように、スライド自体も独特の表現となりえます。
その辺を含めて見ていきましょう。
「スライド」と似たテクニックで「グリッサンド」があります。
一応「スライド」は始まりと終わりの音程が決まっており、「グリッサンド」は決まっていないという定義らしいものがあるそうですが、明確ではないのでここでは全て「スライド」で統一します。
一番簡単で使いやすいのは、半音スライドです。
ジャズやブルースでよく使われます。
使い方は名前の通り、半音下からターゲットの音に向けてスライドするだけ。
するとターゲットの音がちょっと遅れて発音されるので、渋さや囁くような効果が得られます。
逆に、スピード感や勢いは出ません。
例えばスライドせずにド→レと弾くとき、それぞれをピッキングするとアタックがしっかり出て力強い印象になります。
また、この場合音程はドとレがはっきりと発音されます。
一方、ドを弾いて次のレまでスライドすると、レの音にアタック感がなく、すこし印象が柔らかくなります。
また、スライドすると一瞬ドとレの間のド♯/レ♭の音も入るので、短音でド→レと弾くときよりもぬるっとしたリニアな音程の変化が感じられます。
ここがハンマリングやプリングと違うところでしょう。
実際の違いは自分で弾いて確認しましょう。
例えば、1弦12Fを弾くとします。
その際、1Fあたりから一気に12Fまでスライドすることも出来ます。
このときディレイやリバーブを深めにかけておくと、なんともいえないスペイシーなサウンドが得られます。
また、スライドする長さや、ターゲットに到達するまでの速さを調節すると、それだけで表現が変わってきます。
このロングスライドは、スライドが始まる音が明確に決まっているわけではありません。
どこからともなく始まってターゲットに着地するテクニックです。
ロングスライドはターゲットからかなり低いところから行うスライドでした。
今度はそれと逆で、ターゲットからかなり高いところからスライドして下がってきます。
こうすることでちょっと泣いているような独特な印象が出ます。
これも長さや速さを変えることで印象が変わってきます。
クセの強いスライドですが、ここぞというところで使うと、表現がより豊かになってくれます。
こちらも始まりの音程は決まっていません。
一般的に「グリッサンド」と呼ばれるものです。
例えば1弦12Fを弾いて、そこからスライドして下がっていき、適当なところで押弦している左手を離します。
リバーブやディレイと合わせてこれを行うと、音が空間に消えていくような印象が出ます。
また、パワーコードの演奏でもよく用いられます。
例えば、5弦7Fと4弦9Fを同時に押さえ(Eのパワーコード)、そのままスライドダウンし、どこかの時点で左手の押弦をやめます。
歪んだ音でこうすると、独特のロックサウンドが得られます。
例えば既存のソロをコピーする際に「スライド」と明記してあれば大体の人はその通りにするでしょう。
一方、アドリブでソロを弾いたりバンドの曲でソロやメロディを作ったりする際、いつスライドを入れればいいのか分からないという人も多いと思います。
実はこれ、決まりは一切ありません。
100%弾き手のセンスに委ねられています。
そういった意味で使い方がものすごく難しいともいえます。
使い過ぎればぐちゃぐちゃヌルヌルした変なフレーズになるし、かといって全く使わなければ硬い印象になります。
おそらくその絶妙なバランスを知るためにはいいソロをたくさんコピーするのが一番でしょう。
その際盲目的に「スライド」という表記に従うのではなく、なぜそこがスライドなのかを考え、仮にそこをスライドしなかったらどう聞こえるのかを試してみましょう。
また、スライドの長さ、速さなどのニュアンスもしっかり聴き込んで理解しましょう。
そうすると、スライドするべき音がだんだん分かってきます。
遠くからスライドしてターゲットの音を弾こうとする際、どうしても弾くべきフレットを見失ったり、勢いあまってズレてしまうことがあります。
そんなときは目線に気を付けましょう。
おそらくちゃんと弾けない人は、弾き始めでスライドの始点に目がいっており、そこからスライドを目で追って行く感じになっていると思います。
そうではなく、最初からターゲットの音(例えば12Fなら12F)に視点を合わせておき、スライドは手の感覚だけでやるようにします。
するとロングスライドもビシっと決まります。
最後に、究極のスライド「ボトルネック奏法」をご紹介します。
元々は古いブルースの技法なんですが、ロックやポップスでも多用されるので、観たことや聴いたことがある人も多いと思います。
こんな感じ。
最近だと「ぼっち・ざ・ろっく」でも使われていました。1曲目のソロです。
元々はウイスキーか何かのボトルの上の部分を切り取り、それを使っていたので「ボトルネック」と呼ばれるようになったそうですが、この作品のように何かの瓶とか缶でも可能です。
また、最初からギター用に加工されたものも売っていたりします。
やってみたい人は試してみましょう。
個人的にボトルネックはやったことがなく、あんまり興味もなく、やってほしいと頼まれたことも一度もないので未経験です。
それはともかく、スライドについてもっと詳しく知りたい人は八幡謙介ギター教室in横浜にお越し下さい。
引用サイト ギターコード指板図くん - 作ろう! マイコードブック|ギター・マガジンWEB|Guitar magazine