主にエレキギターで使われるテクニック「チョーキング」について詳しく解説します。
「チョーキング」は、英語ではbendingと呼ばれます。
bend:曲げる
choke:窒息させる、詰まらせる
ベンディングがなぜチョーキングになったのかは知りませんが、ここでは一般的な用語として「チョーキング」を採用します。
チョーキングとは、ギターの弦を押さえたまま引き上げたりそれを下げたりして音程を操る奏法のことです。
操作は左手で行います(レフティなら右手)。
ご存じのように、チョーキングはギターの代名詞です。
というのも、構造上音程をシームレスに変化させられる楽器があまりなく、あったとしてもギターほど多彩な表現ができないからです。
例えばピアノではチョーキングのような表現はできないし、キーボードのベンダー(こちらはbendという言葉を使う)で音程操作をしても、ギターのチョーキングとは全然違い、もっと無機質になります。
また、ベースでもチョーキングはできますが、使う機会もあまりなく、効果もギターほどではありません。
チョーキングはたんなる音程操作だけではなく、エレキギターの持つ魅力や可能性を引き出す表現方法でもあるのです。
まず純粋に音程操作としてのチョーキングを見てみましょう。
クオーターチョーキング
1/4音程度音程を上げる(下げる)。
例)ド→ドからレ♭の間
ハーフチョーキング
半音上げる(下げる)。
例)ド→レ♭
1音チョーキング
1音上げる(下げる)。
例)ド→レ
1音半チョーキング
1音半上げる(下げる)。
例)ド→ミ♭
2音チョーキング
2音上げる(下げる)。
例)ド→ミ
基本は弦を押さえた状態から音を上げていきますが、上がったところから下げることもチョーキングとされます(チョークダウン)。
クオーターチョーキングは半音以下なので正しい音程はありませんが、半音以上になると音程を正しく取る必要が出てきます。
半音~1音半チョーキングまでは普通に使います。
ギターにもよりますが、できるとしても2音ぐらいまでが限界でしょう。
チョーキングはただ単に音程を上げ下げするだけでなく、そこにプレイヤーの個性を加えて表現するものです。
ただ、表現方法は膨大すぎて書き切れません。
そこで今回は代表的な表現方法として、音程を上げるスピードの違いから受ける印象の違いをご紹介します。
チョーキングスピードが速い
任意の音までできるだけ早く上げる。
効果:疾走感、勢い、力強さ、若さが出る。
チョーキングスピードが遅い
任意の音までできるだけゆっくり上げる。
効果:エモさ、大人っぽさ、柔らかさ、渋さが出る。
どっちがどのジャンルに向いているということではなく、瞬間瞬間で表現したい内容からチョーキングのスピードを使い分けます。
ギターの弦を押さえてフレットに接触させるためにはそこまで力は要りませんが、それを引っ張り上げるためにはかなりの力を要します。
そのため、無理なフォームでチョーキングをしようとすると腱鞘炎になる可能性があります。
実際に僕の教室にチョーキングが原因で腱鞘炎になった方が多く来られ、フォームの矯正で痛みを出なくしたことが多々あります。
以下、チョーキングの間違ったフォーム、正しいフォームをご紹介します。
まずは間違ったチョーキングフォームをご説明します。
といってもこれで長年チョーキングしてきて何の問題もないという人もいると思いますが、筋力は確実に酷使しているので気を付けた方がいいでしょう。
①3弦7Fを薬指で押さえる。
このとき、指がフレットと平行になっていることに注目。
②押さえた弦を指の力だけで押し上げる
このとき、①でやや曲がっていた指が真っ直ぐに伸びていることに注目。
これは指の力(前腕の筋力)だけでチョーキングしている証拠です。
実際このフォームでチョーキングしていて腱鞘炎になった人を多数知っています。
そもそも指というのはかなり力が出にくい部位なので、指だけで堅く緊張した弦を上げ下げすると筋肉に対する負荷が強すぎて腱鞘炎になってもおかしくありません。
ではどうすればいいかというと、もっと強い部位を使って力を出せばいいのです。
①まずネックを軽く握って親指を出す。
これは「ギタリスト身体論」でいう3FWTというフォームです。
①薬指で3弦7フレットを押さえる
②やや手首を開く(下記主観アングル参照)
③前腕を回転させ、その力で弦を押し上げる
チョーキング時に指がまだ曲がっていることに注目。
つまり指の力で弦を押し上げていないということです。
今度は正しいチョーキングフォームを自分のアングルから見てみましょう。
①薬指で3弦7フレットを押さえる。
手首が曲がり、ネックと掌がくっついていることに注目。
②やや手首を開く
ネックとくっついていた掌がすこし離れます。
③前腕を回転させ、その力で弦を押し上げる
②から③にかけての掌と前腕の動きに注目。
このとき④のように、前腕が外側に向かって回転しています。
できるだけ前腕の付け根で腕を回すことを意識してください。
チョーキング後に指が曲がったままか伸びているかを見てみましょう。
指が伸びていたら指の力を使っています。
正しいチョーキングフォームでは、指は伸ばさず、弦のテンションに耐えるだけです。
その他細かいことはたくさんありますが、それらは教室にてお教えしています。
チョーキングの表現については置いておき、ここではチョーキングの重要要素である音程を合わせる練習法をお教えします。
前提:1弦開放(E / ミ)を基準音とする。
半音チョーキング
①2弦8Fを押さえる
②半音チョーキングする
③そのまま1弦開放を弾く
④音程が合っているか確認する
1音チョーキング
①2弦7Fを押さえる
②1音チョーキングする
③1弦開放を弾く
④音程が合っているか確認する
1音半チョーキング
①2弦6Fを押さえる
②1音半チョーキングする
③1弦開放を弾く
④音程が合っているか確認する
*まずチョーキングして、これで音程が合っていると思ったところで1弦開放を弾きましょう。
*指の腹で1弦を触ると音が出ないので気を付けましょう。
最後に、たかがチョーキング、初心者じゃあるまいし今さらフォームなんて……と思っている方は、一度考え直してみてほしいです。
チョーキングは怪我しやすいプレイのひとつです。
また、怪我は発症していなくても、じわじわと筋肉が固まり、疲労が蓄積して既に爆発寸前となっている可能性もあります(怖がらせるつもりはありませんが、本当に多いんです!)。
チョーキングフォームを見直すことは、怪我を回避して長くギターを楽しむことにもつながるし、表現力UPにもつながっていきます。
これを読んで考えるところがある人はぜひチョーキングフォームについて再考してみてください。