作品が世間に認められるためには100点ではダメ、そこからあえて0点を目指していったどこかに100点を超えるワープホールがあるという話でした。
ここで難しいのは、本当に0点だとそれはそれで0点にしかならないということです。
でも、ギリギリ0点に近い2点とか5点ぐらいのところにワープホールがあるのかもしれません。
ものによっては30点とか50点ぐらいのところにあるかもしれません。
あるいは95点から90点に落としたところにあるかもしれません。
いずれにせよはっきりしているのは、100点を目指して100点を取ったところで100点は絶対に超えられない=世間は見向きもしてくれないということです。
これを知らない、体験していないうちは、僕はその人を一人前とは認めません。
だったら100点なんか目指さなくても最初からどこかにあるワープホールを目指した方がパフォーマンスよくね?と思うのは当然でしょう。
それはそれで否定しません。
ただ、そちらはかなりのギャンブルになると思います。
例えば30点の辺りに100点を超えるワープホールがあると信じて創作し、本当に30点の作品にしかならなかったら誰も相手してくれませんし、それどころか世間からは物笑いにされ、同業者からは評価を下げられます。
また、基本が備わっていて崩すのと、基本もなく崩しているのでは大違いです。
そもそも100点を超えるワープホールは1点から99点のどこにあるか分からないので、必要なくても一応100点取れる実力がないとワープホールを探すことすらできません。
そういう意味で、一見無駄に思えるかもしれませんがまずは教科書通り、型通り100点を目指すことが重要となります。
一方で、100点からあえて0点を目指して100点を超えるという仕組みが最初から分かっていたとしても、それができなくなることもあります。
そもそも100点に近いものが創れるようになるまで相当の時間や修練、場合によっては沢山のお金が必要となります。
そうして一度100点が取れるようになったとき、多くの人はそれを守ろうとしてしまいます。
当たり前ですよね、せっかく頑張って業界的にいいとされるものが創れるようになったのに、それを壊して0点を目指すなんて狂気の沙汰でしかありません。
そうして世間的には何の価値もない100点の作品を一生懸命守って潰れていった人を嫌というほど見てきました。
クリエイターを目指して努力し、80点ぐらいの作品が創れるようになった人は、恐らくもう一踏ん張りして100点を目指そうとさらに努力を重ねているでしょう。
あと20点さえ取れれば、あと10点、いや5点で自分は栄光を掴める、夢にタッチできる、もうちょっと、このまま真っ直ぐ進めばきっと……
と、その先に何もないことは既に説明しました。
そうじゃないんです。
80点取れればもう基礎は十分です。
80点取れたら何が100点かもだいたい見えますしね。
そこから本気で100点を目指すとたぶんもう戻ってこれなくなります。
80点ぐらい取れるようになったら今度は0点を目指すのです。
それぐらいならまだ常識やお約束、慣例などを捨てることも出来るだろうし、同時に基礎も身についているので0点を目指しても無茶苦茶になることはないでしょう。
100点超えを目指すには80点ぐらいが一番いいときでもあり、危険なときでもあります。
では僕の言っている通り80点ぐらいの作品が創れるようになったらそこから0点を目指して100点を超えるワープホールを探っていくとしましょう。
それを始めると何が起こるのか?
まず自分がおかしくなっていきます。
当たり前です、今まで真面目に真っ直ぐ進んできた道を、ゴール(と思っていた地点)まであと20%のところで急に引き返すのですから。
死ぬほど迷うし、その迷いから結局また100点を目指す人がほとんどです。
また周りも困惑します。
「どうしたの?」と心配されたり、「前の方がよかった」と困惑顔でアドバイスされたり、「あいつはもう終わり」と陰口を言われたりします。
露骨に距離を置く人も出てくるでしょう。
まあそんなことはやってる本人も予測できるので、だからこそ皆無難に100点を目指すのです。
もうちょっとのところで100点が取れそうなところからあえて0点に向かうためには、勇気と狂気と忍耐が必要となります。
はっきりいって、頭おかしくないとこの選択は取れません。
これを書いている僕ですら「だけ弁当」の林さんは本当に頭のおかしい人だとしみじみ思いますし……
ただ、100点を超えて世間から評価されるためには、100点間近から0点を目指すという方向転換が絶対に必要なのです。
勇気と狂気と忍耐を持ってこの戦略が執れる人は、少なくとも世間とつながる扉を開けることはできるでしょう。
それがどの程度の評価で、どれだけの富や名声が得られるかはまた別の話ですが。
少なくとも100点では世間への扉は絶対に開かないと断言します。