八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

褒めてくれる先生で大丈夫? ギター教室、ギター講師の役割とは


八幡謙介ギター教室in横浜

ごくまれにですが、生徒さんで異常に褒めてもらいたがる方がいらっしゃいます。

その都度僕は「褒める/褒めないという文脈でやっているのではなく、できてるかできてないかを客観的に判断してアドバイスしています」と答えますが、褒めて欲しがる人はそれを理解できないようです。

 

褒められて嬉しい、モチベーションが上がるというのは分かります。

ただ、講師にそれを求めるのは間違いだし、危険です。

そもそも「褒める」という行為は誰でもできますし、中身が必要ありません。

ギター歴5年の人の演奏を楽器が弾けない人が褒めることもできますし、大人の演奏を子供が褒めることもできます。

一方、ギターの奏法や演奏内容を客観的に判断してアドバイスすることは誰にでもできるわけではありません。

ではギター講師は生徒さんに対して何をすべきでしょうか?

お金を貰って誰にでもできる「褒める」という行為をし、生徒さんの気分を上げて、お茶を濁してレッスンを終えるべきでしょうか?

それは生徒さんに失礼だし、僕からしたら詐欺です。

まず「いい/悪い」「できている/できていない」の客観的なジャッジをする。

ここはプロ云々ではなく誠意の問題です。

そして、何がいいのか悪いのか、どこができているのかできていないのかをちゃんと説明し、悪いところ、できていないところはどうすれば改善できるのかという道筋を示す、それが講師を役割です。

そこにお金を払う価値があると僕は考えます。

 

 

また、生徒さんも最初は褒められないことに不満を覚えるかもしれませんが、講師の客観的なジャッジで上達していけば、それが「褒める」よりももっと意義のあることだと理解できるはずです。

教室ではやたらと褒められるけど、全然上達している気がしないし、世間からも全く相手にされないとしたら、嫌じゃないですか?

それよりも、先生がOKを出したことをやったら音楽仲間から見直された、全然知らない人が振り向いてくれた、バンドでギター弾いて欲しいと言われた……という方が長い目で見るとモチベーションも高まると思います。

そう、ギター教室は世間と個人をつなぐ窓口であるべきなのです。

意味のない褒め言葉だけを羅列する講師は、生徒さんが世間とアクセスする窓口を閉じているのと同じです。

 

あと、余談ですが、生徒さんの中で特に敏感な方は、褒められることで馬鹿にされていると感じたり、苦痛に感じる方もおられるようです。

ある方のブログでピアノの先生が毎回自分を褒めちぎるのが苦痛で苦痛で仕方なかった、それが原因で習い事と同時にピアノも辞めたと書いてらっしゃいました。

以前お話したピアノの先生は、できてない子供を褒めたところ「先生本当はそう思ってないでしょ?」と見透かされてドキっとしたとおっしゃっていました。

そういえば僕自身も、アメリカの音大ではじめて習った先生が褒めちぎってきて、「馬鹿にしてんのかこいつ?」「褒められるためにアメリカ来とんとちゃうねん! ちゃんと教えろや!!」とイライラしたのを覚えています。

 

生徒なんて褒めときゃいいと思ってる講師は、近いうちに痛い目見ることになるでしょう。

相手はその道の素人かもしれませんが、人間としては自分よりも感性が鋭かったり、経験値が高いということは普通にありますから。