前回の記事。
前回はCの転回形をご説明しました。
今回はそれらのコードをさらに引き算する方法をご説明します。
<EGC>と転回させたコードを、さらに引き算してみましょう。
1・2弦だけにすればGC、2・3弦だけにすればEGとなります。
恐らくこれが最小のコードとなるでしょう。
なぜこんなことをする必要があるかというと、チョイスを増やすためです。
コードがCならどんなCを押さえてもいいわけではありません。
合うCもあれば合わないCもあります。
ということは、ヴォイシングのバリエーションを沢山もっているほど合うCが探せるということです。
元のコードから引き算してルートや5度などのボトム部分を省略すると不要な低音が消えてすっきりはしますが、それだけでハーモニーにとって最適なヴォイシングとなるわけではありません。
むしろ重要なのはトップの音です。
そこで、上記図のように弦のセットを吟味し、トップの音を変えて最適なヴォイシングを探っていきます。
これができると他の楽器奏者や、ディレクション・プロデュースなどをする立場の人から『あのギター使いやすいな』『わかってんな』と評価してもらえます。
それがそのまま仕事につながるということも考えられます(もちろん他の要素もあるのでこれだけで仕事が増えるとは言えませんが)。
一度ここまでのおさらいをしましょう。
まず原型のコード(大きいやつ)があり、それを引き算してできたヴォイシング(1~3弦のセット)があります。
さらにそれを転回させることで3種類のヴォイシングができました。
その各ヴォイシングに対し、1・2弦のセットと2・3弦のセットがあります。
ということは、Cというコードに対し計10種類のヴォイシングを獲得したことになります。
まとめてみましょう。
( )内は(弦/音)の意。
①原型(5/C 4/G 3/C 2/E 1/G)
②引き算した原型(3/C 2/E 1/G)
さらに引き算
③(2/E 1/G)
④(3/C 2/E)
⑤引き算した原型の転回形1(3/E 2/G 1/C)
さらに引き算
⑥(2/G 1/C)
⑦(3/E 2/G)
⑧引き算した原型の転回形2(3/G 2/C 1/E)
さらに引き算
⑨(2/C 1/E)
⑩(3/G 2/C)
とこのように、元々の原型から引き算と転回をすることでなんと10種類もヴォイシングができました。
これだけのチョイスがあれば必ずどれかがアンサンブルにぴったりとハマるはずです。
ではこの10種類のヴォイシングをどう使い分ければいいのか?
まずは引き算からの転回形(1~3弦のやつ)3種類をオケに合わせて弾いてみて、どれが一番なじむかを調べましょう。
仮に転回形1がいい感じだったとします。
次にその転回形の3和音の中から、よりオケに最適な2音を選びます(下図)。
どっちが合うかはオケ次第です。
1・2弦のセットはやや主張が強く、2・3弦だとちょっと引っ込んだ感じになると思います。
もちろん、これでは物足りない場合もあるので最終的にやっぱ原型の大きいヴォイシングの方がいいとなるかもしれません。
いずれにせよ大事なのは、ヴォイシングのチョイスを持っているということです。
大きいヴォイシングしか知らないからそれしか弾かないのと、あらゆるヴォイシングの可能性を探った後でそこに到達するというのでは意味が違います。
ちなみに、僕がもしピアノのいるアンサンブルで一般的なポップソングのバッキングを作るとしたら、この図のような2音のヴォイシングから探り始めます。
まず最初に大きなコードからということは絶対にしません。
どうせ邪魔になるのが分かっているので。
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ここまでは音の選び方をご説明してきましたが、次回はこの小さいヴォイシングを動かして、より実践的にリフっぽくする方法を解説します。
続はこちら。