マッキーのニューアルバム「宜候」を聴いていて、タイトル曲「宜候」にうっかり感動してしまったのですが、冷静に歌詞を読んだらこの曲、けっこうとんでもないことを言ってます……
そして、前回も書きましたが、
やっぱこの人反省してねーなと半ば確信したので書いておきます。
もちろん、歌詞を読んだ上での個人の感想なのでそこはご了承ください。
あと一応言っておくけど僕は中学生以来マッキーのファンなので、ファン歴30年ぐらいになりますし、これからも彼の音楽はずっと聴き続けます。
にわかが冷やかしで言ってるのではないことだけご理解ください。
2021年発売
ワーズアンドミュージック。
作詞作曲・槇原敬之。
本作を分析するために、槇原氏の逮捕から判決、そして復帰までを時系列にまとめておきます。
2020年2月 覚醒剤取締法違反で逮捕(2018年4月に覚醒剤、危険ドラッグなどを所持していた疑い)
3月、起訴。同月、保釈。
7月、初公判。懲役2年、執行猶予3年の判決。
8月、起訴事実を認め、控訴せず判決確定。
活動休止。
2021年9月6日、HPにて活動再開を発表。
10月25日、自身のデビュー日と同じ日にニューアルバム「宜候」リリース。
同日、書籍「槇原敬之 歌の履歴書」リリース。
判決が確定してから約1年で完全復帰。
当然、製作はもっと前から始まるので、2021年春か、遅くても夏頃にはデビュー日の10月25日に向けての復帰計画がスタートしていたはずです。
実質内省期間は半年あったかどうかというところでしょう。
なお、こちらの公式動画によると、「全てのレコーディングはこの曲を作ったことからスタートしてきた」そうです。
逮捕、起訴後の復帰第一作ということでしょう。
つまり、現在のマッキーのある意味全てが詰まっている曲です。
それを踏まえて歌詞をよく読んでみると、『こいつ、マジかw』と思えてきます。
そこらへんを解説したいと思います。
待ち望んだその日が もうすぐ来る予感がした
雨上がりの道が 太陽で照らされて光ってたから
【待ち望んだその日】は活動再開の日でしょう。
冒頭からいきなり、『俺、もうすぐ復帰できんじゃね?』という期待から始まっています。
そもそも、この曲を製作した時点でまだ1年経ってもいないのに【待ち望んだ】も何もねーと思うのは僕だけでしょうか…
【雨】は薬物使用や逮捕、バッシングなどマイナス事項のメタファーでしょう(マッキーの歌詞でよく使われる手法です)。
それが、いきなり上がったことになっています。
そして前途が明るく照らされています。
いや、謝罪や反省や内省はむしろこれからじっくり時間をかけて行うべきだと思うんですが……w
いきなり自分でこんな舞台を設定できるというのが腹が据わっているというかなんというか……
別れの言葉さえも 言わずに去るつもりだ
思い出と目が合う前に 僕はここを出ていくよ
【思い出】とは、いろんな悪いこと全部でしょう。
あるいは悪い友人や売人とかかもしれません。
【ここを出ていく】というのは、薬が見つかった自宅とも考えられます。
とにかく、それら全てとの決別を宣言しています。
さよなら さよなら 今度こそさよならだ
ポケットにしまってた 手を出して大きく振ったら
二度目の逮捕なので、【今度こそさよなら】と念を押しています。
が、僕には薬物で何度も逮捕されたあの人やこの人が目に浮かびます。
薬物の再犯率の高さもよく知られたところであり、【今度こそさよなら】の言葉が空虚に思えてきます。
薬物で二度逮捕起訴されている人に「今度こそやめる!」と言われて信用できますかね……
さぁ行こう 海原に舟を出すんだ
さぁ行こう 新しい旅が始まるよ
たどり着きたい場所は 心がもう知ってる
航跡を振り返らず進んでいこう
前を向いて進んでいこうという力強いメッセージにぐっときてしまい、つい「マッキーがんばれ!」と応援したくなってしまいますが、冷静に読むと違和感だらけです。
特に僕がびっくりしたのが【航跡を振り返らず進んでいこう】というところです。
前に進むのはいいんですが、2回も逮捕されて、ファンや周りの人に迷惑かけといて、果たして【振り返らず進んで行】っていいんでしょうか……
あと、もしかしたら「航跡」と「功績」をかけてるのかもしれませんが、だとしたら『俺にはこんな功績があるけど、それももう振り返らないよ』という自慢に聞こえます。
でもマッキーが歌うとなんか急にキラキラしだして、許せて応援したくなるのが不思議です。
この人の初期のヒット曲も、歌詞をよく読むと相当クズでどうしようもない主人公が出てきますが、歌になるとなんかポップでキラキラしてくるのでそれが不思議なんですよね。
僕は思い込んでた 頼まれた訳でもないのに
この先もずっとこの場所から
もうどこへも行けないと
2番は陸と海を対比させています。
陸は辛い過去、海は明るい未来です。
辛い陸地からもうどこにも行けないと思い込んでいた日々を回想します。
白い霧の中浮かぶ 青や赤茶のコンテナ
雨が打ち付ける車の 窓から見る日々は終わる
景色を想像すると、主人公(=マッキー)はどうやら港にいるようです。
ここでも雨がマイナスのメタファーとして使われています。
そこから海原が見えているのですが、どうしても海=明るい未来には出られないという日々が続いています。
しかし、どうやらそれが終わりそうだという予感がしてきました。
とても分かりやすい表現で、マッキーの心情が伝わってくるのですが、そもそもこの人がするべきなのはまず陸=過去の悪い出来事の精算です。
それをきっちり済ませてから大海原に出航するのが筋でしょう。
それなのに、歌詞を読むとどうしても海=未来=音楽製作のことしか考えていないように思えます。
さよなら さよなら
今度こそさよならだ
心に一つの 曇りもない今日の空だ
【心に一つの曇りもない青空】という表現にもびっくりしました。
これを作ったのがいつか正確には分かりませんが、執行猶予付きの判決が出てから1年経っていません。
下手したら1、2ヶ月後かもしれません。
その時点で【心に一つの曇りもない青空】と書ける図太さ……
さぁ行こう 海原へ舟を出すんだ
さぁ行こう 大好きな歌が聞こえるよ
全て自分で決めた それを忘れなければ
この先も後悔はしないだろう
そしてマッキーは大好きな歌が聞こえる海原へ……。
【全て自分で決めた】が何を指すのかは分かりませんが、薬物使用のことも含まれているのは間違いないでしょう。
それを【後悔はしない】と言っちゃっています。
ここまで来ると、『ダメだこいつはww』と笑ってしまいました。
ここまで見てきて、少なくともこの歌から反省の念はまったく感じません。
なのになぜかキラキラしてつい応援したくなってしまうのはなぜでしょう?
これは「もう恋なんてしない」や「NG」など、わがままでどうしようもないクズ男を主人公にした歌がなぜかキラキラしているのと同じです。
たぶん、過去の出来事を無反省で歌にしているからでしょう。
ちょっとでも反省の念を持ったまま歌にしてしまうと、どこか湿っぽさが出てしまうはずです。
マッキーの音楽が持つポップ力は、過去の無反省がそのまま燃料になっているのではないかと僕は思います。
(僕の勝手な想像ですが)マッキーは反省しません。
てことは、また同じことを繰り返すということです。
しかし、その無反省が彼の音楽の原動力でもあります。
だからマッキーは何度も蘇り、我々の前で極上のポップソングを提供してくれます。
マッキーファンは不安を感じつつも安心していいでしょう。
何度やらかしても、何をやらかしても彼は必ずそれを糧に音楽を続けてくれるからです。