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ジャズのアドリブで、出だしから徐々に暖めていくとリスナーは厭きる


八幡謙介ギター教室in横浜

ある程度アドリブができるようになってくると、なぜか出だしで様子見をするようになります。

フレーズを温存したり、アンサンブルの様子を見たり、自分の調子を確認したりしてそうなるのでしょう。

また、ある種の「構築」として、簡単なフレーズから徐々に複雑に、多彩にという作戦でそうしている方もいるかもしれません。

アドリブはどう弾くのも自由ではありますが、このように出だしは様子見をしながら温存し、徐々に暖めていく演奏をすると、リスナーは確実に厭きます。

 

改めて考えると、徐々に暖めるという概念はジャズにはないと言っていいでしょう。

ちょっとアップテンポな曲だと、もう頭からフルスロットルでアドリブしていくことが多いと思います。

そこからの展開でさらに盛り上がることも多々ありますが、様子を見ながら、セーブしながらアドリブに入るというのとは違います。

比較的メロウに弾く人もいますが、それもやはり様子見とかセーブしてそうしているわけではありません。

気になる人は一度、名盤の各曲のソロ頭を片っ端から聞いてみましょう。

様子を見ながら入る類いの演奏はたぶんひとつもないと思います。

最初から100%で入って、120%に到達するという演奏はよくありますが(それを名盤というのかもしれません)。

僕が横浜ギター教室でジャズを教える際、リスナーを意識することを説いています。

これは、長いジャズ修行の間ほとんど誰も教えてくれなかったことです。

今考えると信じられませんが、ジャズの世界では「リスナーが聞いてどう感じるか」を教えていません。

その結果、僕が批判しているように、ライブをやっても客が一桁で当たり前、しかもミュージシャンがそれを問題にすらしないという閉鎖したシーンとなってしまいました。

そうしたシーンから完全に離れたことで、ようやくリスナーの存在を再確認できたというのは皮肉以外のなにものでもありません。

まあ、ジャズを長年やっていると自分の内に内に向かっていくのは分からなくもないですが、それに抗って外に、つまりリスナーに向かってアドリブするよう訓練していけば、その過程で昔日の巨人たちがジャズの秘密を少しだけ囁いてくれるようになります。

なお、ここでいう「リスナーに」とは、観客を目の前にしてという意味ではなく、想定上のリスナーという意味です。

ですから、それは個人練習でも訓練可能です。

また、リスナーを意識することと今の流行に迎合することも違います。

むしろ硬派なジャズリスナーを意識することが大事です。