ここ最近、横浜ギター教室でピッキングを教えるときは必ずといっていいほど「理論通りに」と言っています。
理論とは僕が作ったピッキングの身体操作理論です。
一通り生徒さんにそれを教えて、後はそれぞれ定着させている段階ですが、ちょっとレッスンの時間が空くと必ずフォームが理論から外れていきます。
それをまた理論内に収める作業を地道に行っています。
こう書くとものすごく頭の固い感じがしますが、実際に理論通りに弾いてもらうと音がよくなったり弾けなかったことが弾けるようになったりし、理論から外れていくと音がぼやけたり弾けていたものが弾けなくなっていくので、理論に従って進めていくのが最善であると確信しています。
理論を持つと、ピッキングに対する判断が迅速かつ的確になります。
例えば、何かのフレーズが急に弾けなくなったとしましょう。
このとき、理論を持っていなければ何が原因か分からないのでパニックになってしまいます。
解決法が分からないからとりあえず練習に逃げてしまいます(もっと練習すれば解決できるだろうと漠然と考え、実行する)。
そうすると、多くの場合は余計に間違った方向に向かってしまいます。
崩れた状態で一生懸命練習するんだから、当たり前です。
偶然元に戻れる可能性もありますが、また次のときに同じように回復できるかどうかは分かりません。
そこに理論があれば、まずは理論に照らし合わせて今自分がやっているピッキングをチェックできます。
そこで理論から外れたことをしていれば、ひとまずそれを理論通りに直します。
僕の教室の場合、ほとんどはそこで解決します。
問題は、まだ生徒さん自身でどこが理論から外れているのか見つけられないという点です。
まあこれは何度もやっていればコツは掴めてきます。
「ギタリスト身体論3」が刊行されればテキストもできるので。
このように、ピッキングにしろフィンガリングにしろ、理論をしっかり持っていればスランプに的確に対応できます。
また、一度スランプから論理的に脱出することを経験すれば、次同じことがあったときはもっと簡単に解決できます。
僕も時々不具合が起こることがありますが、ほとんどは即日解決します。
なんせ自分でつくった理論ですから。
「ピッキングに特定の理論を適用すれば個性がなくならないか?」と心配する人もいるでしょうが、そんなことはありません。
世の中にはメソッドが溢れていますが、全く同じ作品を作る人はいません。
スポーツでも同じメソッドを学んだから全く同じ結果が出たなんて事例はないはずです。
個性なんてものは何をしても消えないので心配する必要はありません。
消えるはずのない個性を心配して独学に固執し、怪我をしたりスランプで挫折する方が問題です。
あと、「特定の人にメソッドを学んだらその人と同じになってしまうから嫌だ」と言う人もたまにいますが、それも間違いです。
イチローに野球を学んでも、良くも悪くも絶対にイチローにはなれません。
僕も過去に特定の先生に習っていましたが、その先生の生徒さんは皆同じプレイをしていたなんて記憶はありません。