ジャズといえばⅡ-Ⅴといわれます。
これはまあ概ね異論はありません。
今回はじゃあそのⅡ-Ⅴのどこの部分がジャズっぽさを醸し出しているのかというお話。
先に言っておきます。
Ⅱ-7の♭7度からⅤ7の3度に抜ける
クロマチックで弾く
オルタードスケールを使う
アウトする
これは全部どうでもいいです。
スイングする……というのはある意味正しいのですが、今回はそこはスルーします。
じゃあⅡ-Ⅴのどこの部分がジャズなのか?
こちらはよくあるⅡ-Ⅴ-Ⅰのフレーズです。
たぶん100人弾いたら100人が「これはジャズだ」と言うでしょう。
確かに、これもジャズになります。
しかし、弾く人によってはジャズにならない場合もあります。
なんでかというと、スクエアだから(小節にかっちり収まっているから)です。
だからこのフレーズをジャズにします。
それがこちら。
違いはⅡ-7の前にちょろっと付け足したフレーズ。
一応G7としていますが、別にⅡ-7に対するドミナントを入れたらジャズになるという意味ではありません。
Ⅱ-Ⅴのメインフレーズの前にちょろっとついてる余計なやつが実は一番ジャズな部分なのです!
だから、ある意味こっちが本体で、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰのフレーズは別にどうでもいいっちゃどうでもいいんです。
譜面1は弾き手やアドリブの流れによってはなんかイマイチジャズに聞こえないときもありますが、譜面2は普通に弾けばどうやったってジャズになります。
なんでそうなるのかというと、このブログで何度も書いた通り、ジャズには逸脱という志向があるからです。
譜面1は確かにラインはきっちりジャズになっていますが、小節にかっちりとハマに過ぎているので、逸脱がなく、従ってジャズの要素が足りません。
それをスイング感とか、前後の流れで補足したりすることもできますから、これ自体が絶対にジャズにならないということではないのですが。
しかし譜面2は既に逸脱したフレーズを含んでいるので、まあどう弾いてもジャズになります。
Ⅱ-Ⅴをジャズにするには、Ⅱをどう弾こう、Ⅴをどう弾こう、Ⅰにどう解決しよう……と考えていても実はそんなに意味がありません。
Ⅱ-Ⅴ-Ⅰからどうやってはみ出すかを考えないとジャズらしくなっていかないのです。
これはⅤ-Ⅰでも同じです。
こちらはⅤ-Ⅰのフレーズです。
これもラインはジャズなんですが、フレーズが小節にかっちり収まりすぎていてスクエアです。
このままだとジャズにならない可能性があります。
そこで今度も少し逸脱させます。
あ! と思った方はご明察。
そう、これはチャーリー・パーカーのフレーズです。
もちろん譜面4もそうなんですが、Ⅴの前の逸脱があるとないとでは全然雰囲気が違いますよね。
この、本体のフレーズにない(そこからはみ出している)ところがジャズなんです。
これが掴めればⅡ-Ⅴ-Ⅰはもちろん、あらゆるフレーズをジャズにしていくことが可能です。
過去の名盤を聴くと、必ずこういったフレーズの逸脱(本体のフレーズにくっついている一見余計な部分)があります。
じつはそれこそがフレーズをジャズたらしめる要素だったのです!
聴くべきところはそっちで、本体のフレーズは逆におまけみたいなもんなんです。
だから、本体のフレーズばっかり練習してもジャズにならないという不思議な現象が発生するのです。
よくあるⅡ-Ⅴフレーズ集は、本体(実はおまけの部分)しか乗っていないからやってもほとんど意味がありません。
こうしたちょっとはみ出したところがジャズだという意識で過去の名盤を聴き直してみたら、新しい発見があると思います。
これ以上詳しいことは教室で。