個人的に、美空ひばりは他の数多の歌手と完全に異質であると感じていましたが、最近ようやくそれがはっきりとわかってきました。
美空ひばりは歌とそこに関係する意識を全部自分の外に出して歌っています。
だから歌がとても大きく、逆に本人がとても軽く見え(いい意味で)、頑張ってます感が完全に消えています。
一方、他の歌手はどうしても歌が自分の中に残ったままなので、相対的にこちらに届く分量が少なくなり、歌が小さくなります。
その分歌っている人間が重くなり、どこか苦しそうに見えたり、頑張ってる感が出てそれが押しつけがましく不快だったりします。
比較的歌が外に出ている人もいれば、完全に自分の中にしかない人もいたり、いろんなタイプがいます。
基本的に演歌の大御所は全員歌がちゃんと外に出ていて自分の中には残っていないと思いますが、美空ひばりほどではないようです。
これは難しい話ではなく、単純な算数です。
歌それ自体が100だとして、それを100外に出したら100観客に伝わります。
100あるものを100外に出したら自分の中には0になり、その分軽くなります。
だから美空ひばり本人は軽く見え(これはいい意味です!)、歌はめっちゃくちゃ重く伝わってきます。
逆に100あるものを50しか出せなかったら50しか観客には伝わらなくなり、残りの50は自分に留まるので、その分観客に伝わる歌はスカスカになり、本人が重くなります。
美空ひばりが100出しているとすれば、演歌の大御所は最高でも90ぐらい、それ以外はいいとこ70ぐらいってとこでしょうか。
楽器奏者でいうと、タチアナ・リツコヴァさんはかなりの割合で音をちゃんと外に出しています。
だから美空ひばりのように音がしっかりとこちらに伝わってき、本人は軽く見えます。
もしかしたら、音(歌)を全部外に出すというのはどちらかというと女性的な概念なのかもしれません。
男性はプライドが高いですからね……。