ギターの世界における最大の顧客はギタリストです。
といっても、ギタリストがギターやギター系の機材を買うというお話ではなく(それは普通です)、ギターミュージックの最大のファンがギタリストであるということです。
一見当たり前のようですが、よく考えてみればそうでもありません。
例えば、歌手のファンは歌手(志望)かというとそんなことはなく、仮にいたとしても多くて三分の一程度ではないでしょうか。
ライブをやったら観客の半数以上、多いときは8割が歌手(志望)なんてことはまずありえないですよね。
しかし、ギターの場合はそれが普通になってしまうんです。
ひどいときは観客の100%がギタリストだったりします。
それでもお客様はお客様、何がいけないのか?と思うかもしれません。
もしかしたら、外から眺めていると「ギタリストは太い客がいていいな~」と羨んでいる人もいるでしょう。
しかし、最大の顧客が同業(志望)者であると、様々な問題が発生します。
プロギタリストは、当然CDの売り上げやライブの動員を伸ばしたいと考えており、それだけが目的ではないにせよ、ある程度は収益UPを目指して活動をします。
真面目な人はマーケティングを行うでしょうし、そうでなくても、顧客のリアクションのいい楽曲やパフォーマンスを覚えていて、以後もそれに近いものを続けていくはずです。
さて、思い出してください。
ギタリストの最大のファンはギタリスト(志望)です。
ライブをすれば観客の半数以上はギタリスト(志望)、CDを買う人も同じです。
当然、それらに対するリアクションの声は、一般客よりもギタリスト(志望)の方が大きく、また、同業者だけに説得力も加味されます。
その声はプロギタリスト本人にもフィードバックされます。
ここで、プロギタリストは一般層とギタリスト(志望)のどちらの意見を取り入れるでしょう?
答えはもちろん、後者です。
なぜか?
その方がいろんな意味でビジネスになりうる可能性を秘めているからです。
一般層なら、音源を聞いて、ライブに足を運んでくれて、SNSに感想を書いて終わりです。
しかし、ギタリスト(志望)はそれだけでは終わりません。
相手がプロなら将来的な共演者としてお近づきになったり、アマチュアならギターレッスンの生徒になったり、自身主催のセッションやセミナーへの勧誘、自分の店を持っていればそこへの出演を促したり客として呼ぶ、などなど、ギタリスト(志望)はライブや音源以外にもいろいろとお金を落としてくれるおいしい客になってくれる可能性が高いのです。
そうなるためには、ギタリスト(志望)に気に要られなくてはなりません。
だから一般受けを度外視し、ギタリスト(志望)が好きそうな、彼らが崇めてくれそうな、複雑で難解、テクニカルな演奏をしていかないとダメなんです。