ジャズには、どの曲が弾けるようになったら脱初心者か、どれが弾けるようになったら上級者かという考え方があります。
この考え方はやめておいた方がいいです。
なぜならこれは、記号の処理能力=ジャズの演奏レベルという考え方だからです。
そのまま素直に捉えると、ブルースを弾けたら初級、枯葉や酒バラ、All The Thingsなどで中級、Giant StepsやMoment's Noticeが弾けたら上級といったことになります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
そもそも、ここで言う「弾ける」とは何でしょう?
ロストせずに最後まで弾けること?
それともかっこいいフレーズをバンバン出すこと?
何回客に「Yeah!」と言われたか?
インタープレイできていたか?
……
当然、「弾ける」にもいろんなレベルがあります。
Giant Stepsをロストせず最後まで綺麗に弾ける人もいますが、それがいい演奏かどうかはまた別の話ですし、誰でも「弾ける」ブルース曲で誰にもできないような演奏をする人もいます。
では前者が上級で後者が初級でしょうか?
ジャズは記号の処理を競う競技ではありません、音楽です。
また、楽曲は自分の記号処理能力を競うための課題ではありません、芸術作品です。
ですから、ジャズのこの曲が弾けたら上級、これは初級といった考え方は全くナンセンスだし、この考え方自体が芸術を理解していない証拠です。
ジャズを学ぶ人は、楽曲を記号の複雑さで測るのはやめ、まずはその曲をじっくりと味わいましょう。
あるいは、自分の心にしみてくる楽曲を探しましょう。
そうして、一番いいと思える曲を練習してみるか、あるいはまだ難しければ目標にしましょう。
そこに初級も上級もありません。