世間的に、貧しさの中から成功することが難しく、裕福な人が成功するのは簡単だといった印象があります。
確かに、裕福であればあるほどスタート地点でアドバンテージを持っているし、貧しいよりはいいに決まっています。
しかし、よく考えてみれば、裕福であればそれはそれでいろんな足かせがあるのではないかと思えてきます。
例えばギターで考えてみましょう。
ある若者がギタリストを目指しギターを練習しているとします。
貧しいとまずギターを買うところから苦労しますが、裕福だと親に簡単に買ってもらえるでしょう(全ての裕福な家庭がそうだとは思いませんが、一例として)。
また、音楽の専門的な勉強をするために音大に行きたいと思っても、貧しいと苦労しますが、裕福だと特に苦労もなく通えるでしょう。
そう考えると裕福な方が圧倒的にアドヴァンテージがあると思えてきます。
しかし、ギターを練習するという点においては、経済状況はあまり関係ありません。
貧しくても裕福でも、どちらも孤独に、時間をかけてじっくり練習していかないと上達はしません。
さて、そのとき、どちらかというと裕福な人の方が誘惑が多いのではないでしょうか?
極端な例を挙げると、働かなくてもいくらでもお金が手に入る人は、あらゆる誘惑が常に目の前にある状態です。
欲しいものは何でも買える、いつでもどこにでも遊びに行ける、そのお金につられて人がついてくる、自分の言うことをなんでも聞いてくれる……。
そういう状態で、全ての誘惑を振り切って、あるいはきちんと管理して孤独に練習できたとしたら、並大抵の精神力ではないでしょう。
また、そうした誘惑にギターの練習が勝ったとしたら(遊びよりギターの練習の方が面白いからそうする)、その人のギターに対する情熱は本物です。
さらに、音楽活動ができるようになり、それらが本格化してきたとき、裕福な人の方が障害は多いでしょう。
世間体、親の面子、親戚の目などなど。
音楽をやめてもいつでも仕事があるとしたら、やめるハードルも低くなります。
それでも音楽を続けていくには、相当な情熱が必要となるでしょう。
もちろん、貧しさの中にも様々な困難があります。
しかし、貧しさの中から成功した人が本物で、裕福な状態から成功するのが簡単だという風潮は間違っています。
どんな状態であれ、成功するのは等しく難しいものです。
もしそれに優劣をつける人がいれば、嫉妬や劣等感など、余計な感情がまじっていると見て間違いないでしょう。
いずれにせよ、他人を妬まず、自分の状況でできることをやるしかないのです。
周りに自分よりも裕福な人がいたとしても、その人はその人の苦悩があるのです。