八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

ジャズのアドリブにおけるロスト対策


八幡謙介ギター教室in横浜

ジャズを教えていて、ロスト(コード進行を見失うこと)対策はどうすればいいかとよく訊かれます。

僕も学生時代はロストしないためにどうすればいいかを模索していました。

その後プロ活動をするようになり、自然とロストをしなくなったのですが、何をしていたかというと、伴奏をちゃんと聴いていただけです。

「伴奏聴いてたらロストしないよ」と言うと、いかにも初心者の気持ちが分からない人間のように聞こえるかもしれませんが、もうこれに尽きるとしか言いようがありません。

では以下、「伴奏を聴いていたらロストしない」の仕組みをご説明します。

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伴奏って何?

そもそも伴奏って何なんでしょう?

伴奏者はソロイストであるあなたに何をしているんでしょう?

伴奏者は、「今このコードだよ」「はい、この特徴的なコードが来たよ」「今このセクションだよ」「はい、コーラス終わるよ」とあなたに教えてくれています。

ベースはコードの根本的な流れを、ピアノやギターはハーモニーのカラーや雰囲気を、ドラムはセクションの変わり目をそれぞれの演奏で常にあなたに提示しています。

もちろんそれ以外のこともいっぱいしていますが、伴奏者が「今、曲のどの部分を演奏しているか」を提示しないということは基本ありません。

 

伴奏とはカーナビのようなものです。

カーナビの指示を理解し、ちゃんと聴いていれば迷うことはありませんよね?(カーナビが正しいことが前提ですが)

それと同じで、伴奏の指示(今どんなコード、どこのセクション)をちゃんと聴き、それが理解できていればロストすることはまずないし、仮にロストしてもすぐに元に戻れます。

 

 

ロストの原因1 伴奏を聴いていない

伴奏というナビがあるにも関わらずロストしてしまう原因として、そもそも伴奏を聴いていないことが挙げられます。

ほとんどの場合は、聴いてないというか、聴く余裕がないのでしょう。

確かに、初心者の場合アドリブでソロを弾くだけでもいっぱいいっぱいで、伴奏を同時に聴くなんて考えられないかもしれません。

この場合、問題はアドリブの取り組み方にあるのでここで詳しくは触れません。

 

また、音楽の進行を単なるテンポと拍の連続だと捉えている人もいます。

1234拍で1小節、次の1234拍で2小節……とデジタルに捉えようとする人。

これでも一応楽曲の進行は理解できます。

しかし最初から最後まで拍を正しく数えるのはなかなか難しいし、一度飛んだらだいたい元には戻れません。

それに、音楽には必ずストーリーやカラーがあり、さらに言うとジャズは会話する音楽です。

一人で一生懸命数字を数えていては音楽にもジャズにもなりませんし、ロスト対策にもなりません。

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ロストの原因2 譜面の視認に頼る

これはジャズでよくあることなのですが、ロストしたくない→だから常に譜面を置いて演奏する→視覚情報に頼るからロストする→ロストがよけい怖くなって譜面が手放せなくなる→よけいにロストする……という無限ループが存在します。

僕も大学時代はそんな感じで本当に悩んでいました。

余談ですが、音大ってこんな根本的なことすら解決策を教えてくれないので、個人的には音大を出てからなんとか解決しました。

 

そもそも音楽は音の情報を耳で取り扱う芸術です。

それを視覚や視認でどうにかしようとすると、それだけで脳のキャパオーバーになり、ロストするのは必然といえるでしょう。

もちろんたぐいまれな読譜力があったり、譜面と音の両方を処理できるハイスペックなミュージシャンもいますが(あと、クラシックは根本的に別)。

初心者が視覚的に音楽を認識しながらアドリブしていくのはまず不可能です。

だから僕はどんな初心者でも絶対に譜面を使わずにアドリブの練習をしてもらいます。

曲の覚え方はもちろん指導しますが、そうして譜面なしで弾いていくと、どんな初心者でもロストしなくなります。

 

 

ロストの原因3 伴奏の内容が分からない

伴奏の話に戻ります。

譜面を見ずに演奏できるようになり、伴奏は一応聴いてはいる、でもロストするという人は恐らく伴奏の内容が分かっていません。

例えば、

 

ベース「今このルートからこっちのルートに向かってるよ」

ピアノ「今こんなカラーのハーモニーでやってますよ」

ドラム「はい、このコーラス終わるよー」

 

と音で表現し、あなたの演奏をナビしてくれているのが理解できないということです。

「確かに分からない、じゃあどうすればいいんだ?」という人は、とりあえず曲のテーマとベース(ルートのみ)を歌うことからはじめましょう。

そうすると、なんとなく今ここかな?というのが分かってきます。

実は、この「なんとなく」が結構大事なのです。

あと、できるだけ他楽器の友達を作って、伴奏中何を考えて何をしているのかを聴き出しましょう。

ロストしないことの勘違い

”ロストしない”とは、常に今どこのセクションの何小節目・何拍目、何のコードかを把握し、即座に対応できる能力だと思っている人がいますが、それは違います。

ロストしない人の曲の把握の仕方は、意外と雑だったりぼんやりしているものです。

そして、全体のカラーやダイナミクスが進む方向がなんとなく見えているという感じです。

例えば「Just Friends」でいうと、

 

『今13小節目でG7が出てきたからこれを2小節弾いて、そのあと2小節でBセクションだな』

 

ではなく、

 

『あ、なんか違う響きがする…そっかここG7だっけ…2小節あるな、じゃそろそろAセクション終わりか』

 

という感じです。

ロストしない人はいちいち小節を数えていないし、いちいちコードネームも考えません。

まあ、脳内のことなのであくまで想像だし、もちろん毎コーラスこんなでもありませんが。

いずれにしても、楽曲やハーモニー、セクションをざっくり捉え、ちょっと迷ったら伴奏を聴いて軽く修正し、わりとロストに近いところでやってるけどでも決定的なロストはしないというのがロストしない人の弾き方でしょう。

 

その辺が詳しく知りたい人はまた横浜のギター教室までお越しください。

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