全体的にやや駆け足なのと、時折(架空の)コルトレーン本人がナレーション(声はデンゼル・ワシントン)するという設定に戸惑った。
もちろん出典は本人の言葉からなのだろうが、ご本人登場は没後ドキュメンタリー作品としては禁じ手なのでは?
視点もいきなり変わるので、さっきまで「コルトレーンは~」「彼は~」と解説されていていきなり「私は~」と言われても一瞬今誰が話しているのか分からず、『ああ、そういう設定だったっけ』と思い出すのにちょっと時間がかかった。
とはいえ、内容はかなり豪華。
インタビューには家族はもちろん、マッコイ・タイナーやベニー・ゴルソン、ソニー・ロリンズなどの仲間たち、サンタナ、ジョン・デンズモア(DOORSのドラマー)、そしてなんとクリントン元大統領まで登場し、コルトレーンや彼のバンドの魅力を語ってくれる。
後半は晩年の日本ツアーの様子を案内者やコルトレーンマニアの日本人が解説してくれるので日本人にも嬉しい作りとなっている。
個人的に驚いたのは、コルトレーンが1945年に海軍に入隊し、パールハーバーに駐屯していた(これもちょっとドキっとするがここではなく)ときの演奏。
作中で実際に聴けるが、「え?これがあのコルトレーン???」と驚くほどなんの輝きもなく、ただチャーリー・パーカーを真似しそこなった無名のミュージシャンとしか思えない。
今でいう「弾いてみた」で好きなアーティストをカヴァーしてみたもののイマイチというレベル。
家族やコルトレーンを崇拝するジャズミュージシャンですらはっきりと酷評するほどひどい演奏。
コルトレーンといえば努力神話の見本のような人で、その逸話にはうんざりしていたが、改めて初期の演奏を聴きそこからあの”コルトレーン”になったのかと思うと、確かにこれはもう神話である。
作中にはプライベートな映像も満載なので、マニアはともかく往年のファンも初心者も彼の人となりを知るにはいい作品となている。
個人的に、後半に出てくる大阪人のコルトレーン・マニアのうさんくささが絶妙!
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