だいたいどんなジャンルでも、「古い音源を聞け」と言われます。
僕もよく言います。
ではその古い音源に何があるのでしょうか?
なぜそれらを聞かなくてはならないのでしょうか。
ざっくり言うと、2000年代まで(90年代いっぱい)の音源と、それ以降のものではミックスが全然違います。
何が違うかというと、音源の空気感と空間です。
昔の音源を聞くと、ドラムはここ、ギターがあそこ、歌がここ…と、空間が一発で浮かんできます。
単なる配置ではなく、”空間”です。
そして、それぞれの楽器がその空間で鳴っている様子(空気感)が聞き取れます。
ただ楽器の音がクリアに出ているだけでなく、その周りの空気の質感まではっきりと聞こえてきます。
2000年以降は、そういった空気感をコンプで潰して音圧を稼ぐのが主流になってき、その傾向は年々増しています。
また、2000年以降は、コンプ云々以前に、素人レベルのミックスでも音源を販売、流通させることができるようになってきました。
それらはもちろん、一流のエンジニアがミックスした音源の足下にもおよびません。
その他、2000年以降録音物の音質が悪くなってきた要因を挙げていけばきりがありあません。
特にここ数年の音源はひどいもので、空間も空気感もあったものではありません。
これは”進化”ではなく、明らかに”退化”あるいは”劣化”です。
ですから、いい音、いいミックスを聞こうと思ったら、古い音源にあたるしかありません。
こちらはちょっと難しいのですが、古い音源からは、ミュージシャンの意志を聞き取ることができます。
歌手なら、歌の世界観や伝えたいことの表現(たんなる歌唱テクニックではなく、もっと奥にあるもの)、楽器なら演奏者の持つグルーヴ感や情熱……。
古い音源からはそういったものが聞き取れます。
しかし、いつからか音楽は様相を変え、タイムが合っていればOK、記号を正しく弾けていればOKというものになってきました。
さらに、そういった音楽文化で育ってきた者が、古い音源の表面だけを聞き「下手w」と揶揄したりします(いっぱいいますよ、そういう人)。
はっきりとは言えませんが、80年代以降はその傾向が強いといえます。
ですから、この場合は70年代までのものを聞くべきでしょう。
ミュージシャンが人間として持っている何かを聞くことは、なかなか時間と訓練を要しますが、ありがたいことにそういった意志や情熱が詰まっている名盤は聞ききれないほど残っており、なくなることはありません。
また、何を聞けばいいかも各ジャンルではっきりしています。
だから、今分からなくてもそういった名盤を入手しておき、じっくり時間をかけてその価値が分かるまで付き合うべきです。
30過ぎないとわからないもの、40過ぎないとわからないものもありますが、それは単なるおっさんおばさん趣味だということではなく、その音源が持つ世界観がそれだけ深いということです。
最近は、一昔前みたいに大人が「あれ聞けこれ聞け」と言わなくなってきました(若者が老害とか昭和とかいっていじめるからでしょうかw)。
また、古いのは聞くけどスマホで、という子も多いでしょう。
それだと意味がありません。
大人がこぞっていいと言う音源をいい音で聞く。
これをやるかやらないかで天と地ほどの違いが生じます。
と、言うだけ言っておきます。