先日横浜ギター教室の生徒さんにお話したこと。
例えば、僕がソロをとっていて、相手がバッキングをしているという状況で、もうソロを弾きたくなくなることがあります。
音楽の世界でよく言われる、「その伴奏じゃ弾けないよ」というやつです。
なぜそう感じるのか?
別に、伴奏が下手だからではありません。
タイムがブレるからというわけでもありません。
ただ、相手がこちらを無視している感じがして、やる気がなくなってくるのです。
それは、例えば、ギターデュオでこちらがソロをとっているのに、相手の音量の方が大きいとか、譜面にかじりついているとか、こちらのソロを無視して好き勝手なヴォイシングを使っているとか、あるいは相手の態度にどこか段取り的な感じがしたり、熱量が感じられなかったり、寒々しかったり……など、いろんな要素が重なって、やる気がなくなってくるのです。
そうなるともう、段取りとして曲を進めていくしかありません。
そして、この「それじゃ弾けないよ」という感覚が分からない人がけっこういたりします。
タイムさえ合っていれば音楽になっている、記号さえ合っていればインタープレイが成立している、という考え方です。
前者(人間同士が合わせる)の価値感と、後者(タイムと記号を合わせる)の価値感は水と油で、絶対に交わることがありませんし、話すら通じません。
ですから、共演できなくなってきます。
しかし圧倒的に後者の方が多いから(そして後者の方が使いやすい)、前者は次第に現場から遠ざかり、シーンから消えていく傾向にあるようです。
人間を感じられないミュージシャンがどんどん減っているというのが何とも悲しいですが、仕方ないのでしょう。
個人的に、細々とそういう価値感を教えていくしかありません。