「毎日一生懸命練習してるのに全然上達しない……」
「仕事で3日間ギターを触れなかったのに、なぜか上手くなってる……」
誰しも一度はこういった経験があると思います。
実はこれらは、脳のメカニズムと関係しています。
今回はこうした現象を紐解きながら、練習について再考したいと思います。
練習とはざっくり言うと、脳に情報を与えることです。
いわゆる「体で覚える」というのも同じで、身体感覚を通じて脳に情報を与えています。
そして、ここが大事なんですが、練習中は上達はしません。
なぜなら、練習中は様々な情報を脳に送信している時間だからです。
例えば、新しいアプリをインストールしている時間、と考えれば分かるかと思います(インストール中はまだアプリは使えませんよね)。
練習内容をきちんと消化し、本当に使えるようになる(上達する)のは、それらの情報をインストールし終えたときです。
そのために絶対必要なこと、それがオフです。
そして、そのオフに自動的に働く脳の機能をデフォルト・モード・ネットワークと呼びます。
デフォルト・モード・ネットワーク(以下DMN)をざっくりと説明すると、
・人間の脳はなにも活動していない(ただぼーっとしている)ときでも、活動時と同じぐらい働いている
・なにもしていないとき、脳はDMNを活性化させ、自動的に情報の整理を行っている(主に「内的思考」に関連しているとされるが、2015年でもまだ研究段階)
周りの人間を思い出してみてください。
きっちり遊ぶ(オフをとる)人は、勉強でもスポーツでも仕事でも、きっちり結果を出している人が多いのではないでしょうか?
「あいつ、あれだけ遊んでるのに何で……」と思ったことはありませんか?
そういった人はDMNの使い方が上手い、つまりオフの取り方が上手いんでしょう。
一方で仕事仕事仕事……練習練習練習といった人がイマイチ結果が出せないというのは、情報ばかり詰め込んでそれを整理する時間を作っていないからです。
さて、本題に入ります。
これまでの内容を踏まえると、楽器の上達には以下の二つの行程が必ず必要なのが分かります。
1、練習
2、それを整理する時間(オフ)
練習すれば上達するのではありません。
きちんと練習し、その練習で得た情報をきちんと整理する時間をつくることで上達するのです。
僕は2013年頃から、自分に課題を与えながら、この練習とオフの配分を研究してきました。
現時点(2015年4月)で分かってきたことを以下述べておきます。
個人的な感覚かもしれませんが、だいたい3日から4日練習していると、頭に情報がパンパンに詰まって苦しくなってきます。
その状態でさらに練習を続けても、たいてい先には進めません。
そこでオフを取り、DMNを活性化させ、情報を整理します。
ということは、オフはだいたい週2回ぐらいは必要だということです。
少なくとも、完全オフの日が週1回はないと情報の整理は追いつかないでしょう。
この配分は個人差がかなりあると思いますが。
オフの日は楽器はもちろん、音楽も極力聴かないようにします。
大事なのは、丸1日オフにしてさらに一晩寝ることです。
オフのまま何もせず寝ることでDMNの働きが強くなり、より情報が整理される感じがします。
土曜日をオフにするとしたら、一旦寝て翌日の日曜日まで絶対に何もしないようにしてください。
寝る前にちょっと確認…などもやめましょう。
この「完全オフの日」に外に出て遊んだりしましょう。
逆に、遊びに誘われた日を「今日は完全オフだ!」と決めるのもいいかもしれません。
こうすることで、練習と付き合いを両立させられます。
個人的には、3日から4日練習を続けたらだいたいオフを取ります。
あるいは、1日だけ猛烈に練習したとしたら、翌日は必ずオフにします。
そうすることで頭がすっきりし、また練習を再開すると必ず問題点が解決されています。
講師として教え方がひらめくのもやはりオフの時間です。
また、練習内容でいうと「もうちょっとで何かが掴めそう」だと思ったら翌日をオフにします。
もうちょっとで掴めそうなときはもっと練習したら確実に掴めるだろうと思ってしまいますが、たぶん逆です。
脳が情報をいまいち整理しきれていないから掴めそうで掴めないんでしょう。
最後に。
DMNを知ると、音楽の世界でよく言われる「1日練習を休んだら取り戻すのに3日かかる(だから練習は毎日やれ)」は大嘘だということがよく分かります。
僕はこれをもう随分前から言っているんですが、いまだに「1日休んだら~」という発言をネットでちらほら見かけます。
本記事を読んだ方は、こんな昭和のスポ魂漫画みたいな時代遅れの言説に騙されないようにしてください。
正しくは「1日休んだら3日分の練習が整理されて上手くなる」です。