楽器の練習法として、ただひたすら弾くだけ、ひらすら長時間練習するだけというものがあります。
そもそもこれ自体「練習法」とはいえないのですが、そういったことを言う人は多いし、実際にやっている人もまだまだ多いと思います。
はっきり言いますが、時間の無駄です。
そもそも、今何かが弾けないということは、弾き方が間違っているからです。
その状態でひたすら長時間練習してもほとんどの人は弾けるようになりません。
ごくたまに練習している過程でいつの間にか奏法が改善され、弾けるようになる人がいますが、それも偶然でしかありません。
そうやって偶然弾けるようになっても、また何かの拍子で奏法が変われば弾けなくなります。
そこで、理論が必要となります。
といってもいわゆる音楽理論ではなく、フォームや練習に対する理論です。
僕が研究している楽器のための身体操作や、脳科学分野で研究されているDMN(休んだら脳が情報を整理するという機能)などがそれにあたります。
理論は、なぜできないかという疑問に一定の回答と示唆を与えてくれます。
例えば、僕は肩を使って弦移動するという方法を理論化し、教えています。
この理論は、なぜ弦移動でミスするのかという問いと、では何をどう改善すればいいのかという問題に、少なくとも理論上完璧な答えを持っています。
もちろん実際にやるのは難しいですが、理論通りにできたとき、必ず問題は解決されています。
ですから、練習するにあたって、必ずそこに何らかの理論が必要となるのです。
それがあれば、その理論を習得し、体現するに必要な時間だけ練習すればいいのです。
ひたすら弾くだけの練習は、ただの行き当たりばったりで、運まかせでしかありません。
しかもそこに「自分はこれだけ長時間練習した」という妙なプライドが加わってしまうのでやっかいです。
正しく合理的に練習し、上達したい人は、何に対してもきちんと理論を持って教えてくれる人を探しましょう。