最近、脱ジャズ中級者というテーマでレッスンが進むことが多くなってきました。
ジャズ中級者とは、ジャズは一応弾けるけどなんか違う、でもどこが違うか分からないという人のことです。
100%ジャズのアプローチをしているはずなのに、なんかジャズに聞こえない、長年同じ内容の演奏から抜け出せない、新しいアプローチを試してもなぜか根本的に変わらない……という成長が止まってしまった状態。
最近、ようやくこの状態から抜け出すためのポイントが見えるようになってきました。
結論から言うと、視野を広げることで中級から抜け出すきっかけが生まれてきます。
といっても、 ジャズから一度離れてみるといったことではありません。
この場合の視野とは、何拍先、何小節先まで見えるかという意味です。
例えば、今弾いてる小節(コード)しか見えていない場合は、視野が狭いです。
次の小節(コード)が常に見えている人は視野が少し広い、4小節ぐらい先まで見えていたら視野は十分広いと言えるでしょう。
ジャズをジャズたらしめるために、この視野の拡大が不可欠なのです。
ではなぜそれが必要なのか?
仮に今鳴っているコードしか認識できていないとします。
C△7だとしたら、その小節の一拍目で『今C△7だ』と認識し、そこからはじめてそのコードへのアプローチが出来る状態です。
これだとジャズでは遅いんです。
ジャズに必要なのは、フレーズの逸脱です。
ある小節でC△7が出てくるとしたら、律儀にその小節に入ってからC△7へのアプローチをするのではなく、そこから1拍2拍早く行うことでジャズらしくなっていきます。
(こちらの記事で譜面にして具体例を挙げています)
常に今のコードしか認識できないとすると、1拍2拍早いアプローチはできません。
だから視野をひろげて、最低でも1小節先に何のコードが来るかが見えていないといけないのです。
1小節先にC△7が来ることが分かっていれば、1拍2拍早くアプローチすることができるようになります(もちろん、最初は苦労しますが)。
それが何よりもジャズらしさを醸し出してくれるのです。
どれだけ記号を学んでも、タイムを正確にしても、どれだけ複雑なアウトをしても出てくれなかったジャズらしさが、こうしたフレーズの逸脱で驚くほど強くでてくれます。
それを出すために視野を広げるのです。
これが脱ジャズ中級の唯一の突破口だと断言してもいいです。
ここで見えてくるものがあります。
それは、日本人の几帳面さと安定志向です。
我々は、電車が1分と違わずに到着し、停止線から数㎝とズレずに停車することが当たりまえだと思っています。
赤信号では止まる、ゴミはきちんとゴミ箱へ、ルールはちゃんと守る。
また、生活はできるだけ冒険せず、社会からはみ出さず、安定する方へほとんど本能的に向かっていきます。
これがジャズのアドリブにも出てしまうのです。
コードはきっちりと弾き分けて、はみ出さず、タイムもできるだけブレないように、ⅡーⅤはきちんと弾きこなし、習ったアウトを正しく実行する。
これらは全て正しいんですが、その正しさが故にあるレベルから先に進めなくなってしまいます。
これがジャズ中級者の壁です。
その壁を破るためには、一度日本人を捨てないといけません。
ここがジャズの難しいところです。
枠に収まる美やそこから得られる安心感を捨て、ルールを無視し、時間を守らず、自分を出していく。
これは抽象論ではなく全て具体的にフレーズとして出せることです。
細かいことはブログでは説明できないので教室で。