ギター教室で、「ただ弾くこと」と「練習」の違いについて時々話します。
というのは、生徒さんのお話を聞いていると、それらを混同していることが多いからです。
例えばコードを押さえてもまだちゃんと綺麗に全部の音が出ないとします。
当然レッスンとしては左手のフォームや力の方向、ピッキングのフォームについてレクチャーし、まずはコードが綺麗に鳴るように訓練していきます。
さて、その生徒さんが家に帰って”練習”する際、好きな曲をジャカジャカ弾いているとすると、これは「ただ弾いている」という行為で「練習」ではありません。
今の「練習」はコードを綺麗に鳴らすことなので、ひとまず曲を弾くことは置いておき、コードをひとつひとつ弾いてみて、音がちゃんと鳴っているか、詰まったところがないかを確認し、鳴っていないとすればレクチャーに従って改善していくことが「練習」です。
もちろん曲が弾きたい、もっといろんなことがやりたいという気持ちは分かります。
ただ、そのためにはコードがちゃんと鳴らせないと意味がないので、ここはぐっと我慢してコードをちゃんと鳴らす「練習」をするべきです。
それを忘れて曲をただ弾くだけだと、おそらくいつまでたってもコードが綺麗に鳴ってない状態で弾くだけになります。
そもそも自力でそれが改善できないことを自覚しているからレッスンに来たはずなのですが……
では好きな曲をただ弾くだけの時間は無駄かというと、そんなことはありません。
それはそれで大いに楽しめばいいでしょう。
しかし、楽器というものは楽しんで弾いていればエスカレーター式に上達するというものではありません。
コードひとつちゃんと鳴らすだけでもそれなりの苦労が必要だったりします。
コードは簡単に押さえられても、ソロが弾けない、ちょっとテンポが速いとついていけない、理論が分からないなどなど、1曲弾くだけでもいろんな問題が浮上します。
それらを克服し、好きな曲を満足に弾くためには「練習」が必要となってきます。
「練習」というのはだいたいがつまらなく、不本意なものです。
だからどうしてもそれを自分の都合のいいように変えたくなります。
そこをぐっと我慢して、今自分が取り組むべき課題をしっかりと認識し、それを「練習」することで楽器は必ず上達します。