エフェクターにあまり興味がなくても、「歪み」に関しては知っておく必要があります。
なぜなら、エレキギターと「歪み」は切っても切れないものだからです。
また、一口に「歪み」といってもいろんな段階があって、それを知らないとせっかく購入したエフェクターが使い物にならないという悲劇も起こり得ます。
ですから、まだギターを持っていなくても「歪み」に関しては先にある程度知っておくことが重要です。
まず最初に「歪み」と書いてどう読むか?
音楽用語としては「ひずみ」と読みます。
「ゆがみ」とも読めますが、音楽の世界ではその読み方はしません。
余談ですが、「ひずみ」と読むのを分かっていてわざと「ゆがみ」と読む中二病ギタリストもたまーにいます。
恥ずかしいので感化されないようにしましょう。
そもそも「歪み」とは何かというと、ノイズのことです。
あるいは音響的に正しくない(エラー)状態のことです。
漢字を分解すると「不正」となっているところからもそれが分かります。
そもそも、音響の世界ではいかにしてこの「歪み」を出さないようにするかが最大の問題でした。
音楽を聞いたとき、音が割れていたり歪んでいたら嫌ですよね?
ですから、音響機器は基本音が歪まないように設計されています。
ではエレキギターと「歪み」はどのようにして出会い、ここまで発展したのか?
こちらの動画でギターと歪みの歴史を紹介しています。
全編英語(中国語字幕)です。
短い動画ですが、かなりしっかり取材しているのが伝わってきます。
内容をざっくり解説すると、
そもそも
「歪み」はレコーディングにおいて敬遠され、リスナーに不快感を与えるものだった。
1940年代
ギターアンプが持つ「歪み」の性質に気づき、その音とエレキギターがマッチすることから、あえて歪んだ音でプレイするギタリストが登場。
まだエフェクターとしての「歪み」はない。
壊れたアンプを一時的に修理する過程で、本来そのアンプになかった歪みが偶然生まれることもあった。
1950年代
ギタリストは自分好みの歪みを生み出すため、わざとスピーカーのコーンに穴を開けたり、カミソリで傷をつけたりしていた。
1960年代
初めてコンパクトエフェクターとしての「歪み」(Fuzz)が発売され、アンプを壊さなくても歪みが得られるようになった。
その後ジミ・ヘンドリックスがFuzzを愛用、独特のギターサウンドを構築。
1970年代以降
数え切れないほどの「歪み」が様々な機材の組み合わせや奏法によって生み出される。
「歪み」を横文字にしたときなぜかいろんな表現があって、初心者の人はそこが分かり辛いのではないかと思います。
では「歪み」を表す英語を書き出してみましょう。
distortion(ディストーション)
「歪み」の最も適切な英訳。
crunch(クランチ)
本来は「噛み砕く」という意味。
音楽用語としては「歪み」に入る。
overdrive(オーバードライブ)
本来は「過剰運転」という意味。
音楽用語としては「歪み」に入る。
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lead(リード)
リードギターを弾くための歪みという意味。
たまにそういう表記がされているときがある。
dirty(ダーティ)
歪んでいない綺麗な音をcleanと呼ぶのに対し、歪んだ音をdirtyと呼ぶ場合もある。
アメリカ人がよく言うが日本ではあまり使われない。
high-gain(ハイゲイン)
とても強い歪みのことをこう呼ぶ場合もある。
下三つは置いておき、ディストーション、クランチ、オーバードライブについて以下サウンドの違い(歪みの違い)という観点からご説明します。
ディストーション、クランチ、オーバードライブは、それぞれ歪みの量や強さで分類できます。
弱い方から、クランチ<オーバードライブ<ディストーションという順番になります。
最も弱い(クリーンに近い)歪み。
弱く弾くとほぼクリーンな音、強く弾くと軽く歪んだ音になるのがクランチの特徴です。
ただ、クランチといっても幅があるので、本当にクリーンに近いものと、オーバードライブに近いものなど、いろいろな音色があります。
以下全てにおいて言えることですが「このエフェクターを使うとクランチの音が出る」といったものは基本ありません。
弾き方やセッティングの幅、機材の組み合わせでどうとでも変化します。
クランチサウンドが聴けるジャンル
50年代のロック、ロカビリー、ファンク、ブルースなど。
クランチよりやや強い歪み。
本来はアンプを過剰運転(ヴォリュームを上げすぎる)させたときに得られる歪みのことを言ったらしいです。
現代ではアンプ云々ではなくオーバードライブというサウンドがあり、「overdrive」と銘打ったエフェクターが数多く発売されています。
もちろんアンプで作ることも可能。
現代のギター用機材でオーバードライブさせたから壊れるということはまずありません(それを見越して設計しているので)。
歪みとしては最も汎用性の高いサウンド。
オーバードライブサウンドが聴けるジャンル
ロック全般、ブルース、ポップスなど。
語義的には「歪み」全般を指す英語だが、音楽的には「強い歪み」のこと。
機材によってはアンプのみで作れない場合がある。
また、クランチやオーバードライブ用のエフェクターでは作れない場合が多い。
主に80年代以降のハードロック、メタルなどで聴ける強い歪みだと思って間違いない。
また、2000年以降のラウドミュージックやニューメタルの強い歪みもディストーションと呼ぶ。
ディストーションサウンドが聴けるジャンル
ロック、メタル、ハードロック、ニューメタルなど。
それぞれのサウンドはこの動画で確認できます。
歪みについて知っておきたいのは、引き算はできるけど足し算はできないということ。
例えば、エフェクターとしてクランチ、オーバードライブ、ディストーションがあるとしましょう。
ディストーションペダルでディストーションよりも弱いクランチやオーバードライブの音を作ることはできますが、クランチやオーバードライブペダルでそれらよりも強いディストーションの音を作ることはできません。
ですので、いろんな歪みの音が作りたいと思ったらディストーションを持っておくと便利だと言えます。
逆にほんのちょっと歪んでくれたらそれでいいという人は、クランチかオーバードライブで十分でしょう。
歪みはアンプでもエフェクターでも作れます。
ではどっちが正解かというと、どっちでも構いません。
アンプでちょっとだけ歪ませておいてさらにエフェクターで歪みを足すことも可能です。
アンプの歪みだけで音を作るのもありでしょう。
機材の使い方は自由であり、そこがギターの楽しいところです。