クラシック系ミュージシャンの動画で、「留学するのに曖昧な動機しかないのなら成功しないから絶対にやめた方がいい」という意見がありました。
最初は『うん、確かにそうだ』と思っていたのですが、そこから改めて僕自身の留学の動機を思い出してみたところ、自分でも恥ずかしくなるぐらいいい加減でした。
しかし、一応今ギター講師としてやっていけているので、成功したことにはなると思います。
あれ、動機が曖昧でも留学する意味はあるんじゃね?
と思ったので、書いておきます。
まず先に、僕が留学で得たものを書いておきます。
音楽
技術や知識が上がった
現地のローカルバンドで活動し、アメリカ東海岸各地で何度もライブができた
信頼できる先生に出会えた
音楽に対する認識が根本から変わった
生活
英語がしゃべれるようになった
自分の意見を臆することなく言えるようになった
常識にとらわれないようになった
視野が広くなった
帰国後
色々やった結果、ギター講師として知られることになる
教則本9冊、DVD1本刊行
横浜で個人教室を運営
ざっくり挙げるとこんなもんです。
ちなみに、留学してたってだけでもらえた仕事はたぶん一個もありません。
これらが「成功」かどうかは別として、自分にとって大きな「成長」になったことは間違いありません。
ではそもそもなんで僕がアメリカに音楽留学したのかというと、
おかんに言われたから
です。
恥ずかしいんですが、これは本当です。
あるとき母親に、
「あんた、ジャズやりたいんやったらアメリカ行ってきたら?」
と言われて、
「ん~……ほな行くわ」
と答えたのがきっかけでした。
自分でなんとかして留学するのはめんどいけど、行かせてくれるのならまあ行くか……という感じです。
目標もなく、自分の意思ですらないという最悪のパターンです。
この程度のノリで本当にアメリカに行く自分も自分ですが……
余談ですが、母はミュージシャンです。
さて、そんな状態で僕はアメリカに留学したわけですが、まず認識したのは言葉の壁です。
一応日本で勉強していったのですが、全く通じませんでした。
そこで、『アメリカまで来たんだから、英語ぐらいは習得して帰らないと意味がない!』と奮起し、日本人とルームシェアしていたアパートを出て、日本人以外とルームシェアすることにしました。
そこからほぼ24時間英語生活が始まり、なんやかんやで英語を習得しました。
今では字幕なしで映画が見られます(たまに理解できないこともあるが)。
また、留学したての頃の僕は音楽的な興味も狭く、好きなものしか聴いていませんでしたが、学校や外でいろんな音楽に触れたり、バンドに誘われるにつれ、『せっかくだから触れた音楽は全部吸収しよう』となんでもやることにしました。
興味がなくてもやったらやったで楽しかったので、それ以降自分の好き・嫌いは無視してできる音楽は何でもやるようにしています。
その結果音楽的な認識が広がり、今のレッスンにも役に立っています。
また、これは何度か言っていることですが、ボストンでバンドに入り毎週末ツアーをしていたのですが、それが僕にとってはあまりにも過酷でした。
そうして『今(23歳ぐらい)でこんなにヒーヒー言っていたら、40、50になったら無理だな…』と想像しました。
そこで、たぶん自分は体力的にプレイヤーに向いていない、だったら講師を目指すか……と考えはじめました。
その後、本格的に教えはじめたら気質にも合っていたので、今でも続けています。
上記のような動機すらない状態で留学して、ここまで将来設計ができました。
それ以外にも信頼できる先生に出会えたり、レベルの高い生徒に刺激を受けたりし、充実した留学生活が送れた気がします。
あと、二学期目にあの911テロが起こったことも思い出深いです。
目的意識がなく、留学してからも見つからなかったとしても、海外に住んでいるだけで必ず刺激は受けます。
当たり前ですが自分の国となにもかも違うし、異なる文化に触れることで自国の文化や自分のルーツを再発見することもできるでしょう。
だから海外に住む”だけ”が無駄だとは僕には思えません。
仮に耐えられなくなり留学を途中で断念したとしても、それはそれで何かの発見になると思います。
結論として、海外留学できる環境にあれば、大した動機がなくても行ったほうがいいと僕は思います。
もちろん、無理して行く必要はありませんが、行ける環境にあり、それでも意義があるかどうか迷っているなら、僕は行くべきだと思います。
僕みたいに、何の動機も目的もなくてもちゃんと何かを掴んで帰ってき、将来設計も立てられるケースもあるでしょうし、合わなかったらそれはそれで一つの収穫といえます。
変に意義や目的を重視して行動しないと、将来気軽に動けない状態になったときに後悔するかもしれません。
だったら思い切って行動したほうが絶対にいいと僕は思います。