先日購入したCambridge Audio SX-50。
とりあえず一日使ってみた感想です。
一言でいうと、音楽的なスピーカーです。
オーディオスピーカーなんだから当たり前だろと思うかもしれませんが、スピーカーも色々で、それこそ僕が映像用に使っているAudioengineは音楽を聴くには向いていません(ローが暴れすぎる)。
また、本来オーディオスピーカーとして開発されたYAMAHA NS-10M通称テンモニも「音楽を聴く」というよりは「音をチェックする」スピーカーです。
その点、SX-50は色々な音楽を楽しめるように設計されている印象です。
レビューでは「暖かみのある音」と言われていますが、僕もそう感じます。
「古い音楽向け」とも言われますが、個人的にはそうは感じませんでした。
新しい音楽を聴いても十分楽しめるし、ちゃんとアーティストの作った音を再現してくれます。
もちろん向き不向きはありますが(後述)、テンモニほど年代や作品を選びません。
いい意味でオールマイティに近いスピーカーだと感じました。
SX-50は低域に特性を持っていて、ちょっと硬めのローがしっかり鳴ってくれます。
中域はせり出した感じではありませんが、やはりしっかりと再現してくれます。
高域がやや足りない気もしますが、その分痛さが出にくいのでむしろ心地良いと感じられます。
この高域のやや足りないところが「古い音楽向け」「暖かい音」と表現される所以ではないかと思います。
低域は最初ブンブン暴れていて心配になりましたが、エージングを2時間もしていたら収まってきました。
高域も若干増えた印象ですが、そこまでキンキンした音にはならず、ライドの音も暖かみのあるアタックで出ていて、気持ちいいです。
個人的によかったのが、解像度です。
といっても、今風のカリッカリのやつではなく、音楽的な解像をしてくれます。
例えば、他のハイエンドスピーカーが「北緯何度、東経何度」と座標を示すとしたら、SX-50は「北北東に○○あり」みたいな感じです。
定位や分離感はちゃんと分かるけど、あえてふわっとさせて音と音の境目をぼかしている感じ。
そこがとても音楽的で聴いていてストレスがありません。
テンモニは定規で引いたような分離をするので、モニタリングには最高ですが、リスニングはちょっと疲れるときがあります。
SX-50はかなりのジャンルに対応しています。
ロック全般、ジャズ、ファンク、ヒップホップ、ブルース、メタル、どれを聴いても心地よくそれぞれの音楽を楽しめます。
また、古い音源も新しい音源もちゃんと音楽的に再現してくれるので、年代も選びません。
テンモニでビリー・アイリッシュやトラビス・スコットを聴いたときは全然理解できませんでしたが、SX-50で改めて聴くと『なるほど、これが聴かせたかったのか』とサウンドを楽しむことができました。
同時に、最近はテンモニ使わない人が多いというのも納得。
テンモニだから逆に意図が見えなくなる事も十分あります。
ただ、いくつか。
ジャズも楽しく聴けたんですが、テンモニの方が迫力があり、各楽器の質感も個別に再現してくれます。
SX-50ではジャズの音源の全体をいい感じに味付けしてくれるので聴きやすくはあるんですが、専門的にジャズを聴きたい人はテンモニをオススメします。
しかし、ウッドベースのみでいうとSX-50の方がしっかり聴けます。
テンモニだとウッドベースがぼわんと広がりすぎて音程が分かり辛かったりします。
あと、クラシックはちょっと物足りなさを感じました。
どこか変に加工した感じがあって、もうちょっとナチュラルに聴かせてほしいなーと。
クラシックは以前持っていたDALIのスピーカーがとても良かったと記憶しています。
今回個人的に興味があったのが、スピーカーの生産国と音楽のマッチングです。
オーディオ界隈ではドイツの音楽はドイツのスピーカーが、イギリスの音楽はイギリスのスピーカーが合うとまことしやかに言われます。
DALIはデンマーク製で、デンマーク音楽は持っていないのでそういったことが試せませんでした。
ただ、クラシックにとても合っていたので、ヨーロッパ製×クラシックというマッチングがあったのでしょう。
また、テンモニはかつての世界標準なので、このスピーカーが音楽の生まれた国を選ぶという性質は持ってない気がします。
今回はイギリス製のオーディオスピーカーなので、そこら辺を試すことができそうです。
ちなみに、英国製と米国製はある種の互換性があるらしく、それが正しいとすれば、SX-50は英米音楽に向いているはずです。
果たして本当でしょうか?
……
実際に聴いてみると、
本当でした!
まずイギリスの音楽を聴いてみました。
クラプトン、コアーズ、ビートルズ、ジャミロクワイ、ツエッペリン、フリー、ポリスなど。
どれもクリアで嫌なところがなく、物足りないところもありません。
特に、僕はビートルズは昔からそんなに好きじゃないんですが、今回SX-50で聴いて、はじめて『いい音だなー』としみじみ感じました。
コアーズは昔から好きですが、SX-50で改めて聴いてみると清涼感が増した気がします。
アメリカの音楽はイギリスほどクリアではないものの、やはり気持ちよく再生してくれます。
若干ハイが足りないと感じることがありますが、嫌な感じや物足りなさはありません。
今度はJ-POPを聴いてみます。
すると、まずハイが耳に刺さって痛く感じます。
いろんな音源を聴きましたがどれも同じ印象でした。
また、J-POPを聴くとなぜかコンプ感がきつく感じられます。
コンプのかけかたでいうと、たぶんビリー・アイリッシュとかの方が絶対強いと思うんですが、なぜかきつさは感じません。
やはり英国産のスピーカーだからでしょうか?
ちなみに、テンモニでJ-POPを聴いたときはコンプがきついとかハイが刺さるなんて思ったことはありませんでした。
一通りいろんな音源を聴いて、エージングも進んだところでインシュレーターをかましてみました。
本ブログでも何度か書いた、audio-technica AT6099です。
すると、ハイが伸びてきてヴォーカルがややクリアになりました。
しかしローの芯がなくなり、弱くなってしまいました。
なんとなくCambridge Audioの良さが損なわれてしまった気がします。
そこでまたインシュレーターを取ってみると、ローに芯が出てきました。
やはりハイがちょっと物足りなく感じるので、そこはアンプのイコライザーで足すことにします。
本機はインシュレーターを置くと音が悪くなるという結果になりました。
不思議ですねえ……
アメリカやイギリスの音楽が好きという人は、Cambridge Audioはかなりおすすめです。
特に、イギリスの音楽が好きという人は絶対にこれを使うべきです。
めちゃくちゃいいバランスで再生してくれるので。
アメリカ音楽ならたぶんJBLがベストなんでしょうが、でかいし、最近の小型スピーカーは味付けが強いのでおすすめしません。
その点SX-50はコンパクトで扱いやすく、チューニングもさほどシビアではありません。
ただ、J-POPもよく聴くなら考えた方がいいかもしれません。
J-POPにははっきりいって向いてないと断言できます。
これまでメインで使ってきたスピーカーをざっと比較してみます。
- YAMAHA NS-10M
サウンド
世界基準ではあるがローがやや不足。分離がよすぎる。
得意ジャンル
J-POP、90年代までの音楽、ジャズ、ライブ音源、ライブ映像作品。
不得意ジャンル
00年代以降の音楽。
用途
ミックス、音の分析。
備考
でかい。ニアフィールドには不向き。
- DALI ZENSOR1
サウンド
柔らかくて広い。アタックに欠ける。
得意ジャンル
クラシック、アコースティック、ポップス。
不得意ジャンル
メタル、ヒップホップ、ラウドロック。
用途
リスニング。リラックス向き。
- Cambridge Audio
サウンド
ローからミッドに芯がある。暖かみがある。音楽的に再生。
得意ジャンル
英米音楽、ロック、ポップス、メタル。
不得意ジャンル
クラシック、J-POP。
用途
リスニング。低音をしっかり感じたい人向き。
備考
インシュレーター不要?(ものによるかも)